eki_docomokiraiの音楽制作ブログ

作編曲家のえきです。DTM/音楽制作で役立つTIPSを書いています。

DTMのピアノ音源の処理方法(1)

DTM、ミックスに関する記事です。

DTMで使うピアノ音源のミックスにおける重大な注意点です。

(2018年9月5日更新)

 

 

MIDI打ち込み段階での注意点

基本的な打ち込み方針については、frenchbreadさんが優れたTIPSを書いているので、そうした記事を幾つか参照してみると良いと思います。

 

frenchbread.hatenablog.com

frenchbread.hatenablog.com

 

frenchbread.hatenablog.com

そうした点を踏まえた上で、気をつけたほうが良い点がいくつか紹介しておきます。

 

■ベロシティにヒューマナイズを付けたい場合の注意点

ピアノタッチではないMIDIキーボードを使ってタッチ感を出したい場合、たいていのMIDIキーボードではまともなベロシティ感を与えられません。ほぼ例外なくヘタクソ感が出てしまうだけです。

ピアノタッチ鍵盤を持っていて、なおかつそれなり以上の腕がある場合のみ「良い方向に働く」と思っておくべきです。

 

なお、一部のMIDIキーボードではベロシティ25以下が出ません。稀に良くある。

 

シーンごとの大まかなベロシティを決めた上で、上のリンク先記事のように組み立てると良いでしょう。

 

・ただし、タイミングとデュレーションには使える可能性がある

ベロシティについては上記のとおりオルガンタッチの軽い鍵盤では徒労に終わる事の方が圧倒的に多いです。

しかし、打鍵タイミングについては軽い鍵盤でもそれなりの効果があります。

また、鍵盤の押さえ終わり(ノートオフ、デュレーション)もそれなりに表現できます。ノートオフのタイミングの重要性については後述します。

 

・「タイミングのみ取得」は鍵盤が弾けなくてもそれなりの効果がある

コードチェンジしながら上手に演奏できなくても、適当に3つ4つの鍵盤をリズミカルに叩くことはできるはずです。そういう演奏で「ノートオンのタイミングのみ」をデータ化し、それから音程をマウスで移動させて適切な音程にしていく、というやり方もあります。

これはまともに鍵盤楽器の練習をするよりも効率的です。

実際問題として、鍵盤楽器の経験が浅い人が正確なコードチェンジを演奏するのは大変なことです。

特にクリエイティブなアイディアに満ちた複雑な曲を演奏してRECするなんて、プロ級の演奏能力が無いと無理です。

DTMやるなら鍵盤くらい弾けないとダメ」と言う『ベキ論』を叫ぶ人たちがいますが、バカじゃないかと思います。同じ『ベキ論』を論じるのであれば、DTMで作編曲をするために必要な演奏技術とはどのくらいの水準なのか、一度真剣に考えてみるべきです。

 

和音の下から順に「じゃらーーん」とやる場合、ほぼ間違いなく曲に合わないスピードになります。これは入力レイテンシーも影響していますが、多くは演奏の腕の問題です。ちゃんと曲にあったタッチで鳴らすのって大変ですよ。

 

これについてはまたそのうち個別の記事を書きます。たぶん。

 

■ノートオンとノートオフの価値は同等と思え!

良いピアノ音源を使っているのになんか変だなーと感じるとしたら、それはノートオフのせいです。

もちろんベロシティやノートオンのバラしも重要なのですが、ノートオフによる表現についても研究してみて欲しいです。

ノートオンをバラす手法は少しでも打ち込みをやったことがある人なら知っていることです。

もはや常識レベルなので私はレッスンでもいちいち指導することはありません。

重大な差はノートオフの扱い方です。

 

ピアノに限らず鍵盤楽器というのはコード演奏をする時に指が離れている時間が長い楽器だと認識しておくべきです。(上のリンク先、frechbreadさんの作例をもう一度確認してみてください!単純な四分音符でも、ちゃんと指が離れる演奏になっているのをピアノロール画像で確認できます。)

 

ノートオンがバラバラになっていていることを当たり前に処理できるようになったら、その場面にある音符の並びによっていかに音を短くするべきか?ということを課題にしてみてください。

ピアノが打ち込みくさく聞こえる原因の半分はノートオン。残り半分はノートオフです。

 

 

・ノートオフタイミングの重要性を学ぶ方法

ためしに「一定のベロシティのピアノのデュレーション(ノートの長さ)だけを変更して良い」という縛り条件で、いかにリアリティを出すか?という実験をやってみてください。ヒューマナイズにおいてノートオフがいかに重要かということを実感できるはずです。そういう実験で手に入れた感覚は、ベロシティやペダルを活用するとさらにすばらしい演奏を可能にします。

 

デュレーションというと「ベースのグルーブ表現のことですか?」「ブラスのキレ?」と思うかもしれません。ベースとブラスと鍵盤のデュレーションはどれも意味が異なります。楽器の性質の違いについて考慮してみると、鍵盤楽器デュレーションを良く表現できるはずです。

 

 

■サステインペダルに対する誤解

ちゃんとしたピアノのペダルはオンオフだけではありません。ハーフがあります。

ハーフの時にもそれなりに音の響きが得られるので、ペダル踏み切る前にも響きがあり、ペダルを話し始めてから完全に離れるまでの間にも響きが強調されます。ハーフペダルが無い音源でも、

イメージ先行でコードを切るための細かなオンオフを書いているとナンセンスになることがあります。

リズミカルなバッキングでのペダルはおおむね拍に従ってシンプルに組み立てれば良いのですが、メロディやオブリ要素がある時のペダルは独特の感性が必要となります。

 

下の書籍が割りと詳細にペダルテクニックについて解説しています。

私がピアノのペダルについて学習する時に数冊読んだ中の1冊で、おすすめです。

(リンク先ショップが消滅のため、Amazonに変更しました。)

ピアノ奏法:音楽を表現する喜び Der Weg zum lebendigen Klavierspiel.
井上直幸 著
174p. イラスト・譜面多数
東京:春秋社 1999. ボード装丁
ISBN:4393937457

 

ハーフペダルに対応していないピアノ音源の場合、ノートタイムを非現実的に扱う(特定の指だけ長く/短くする)方法が良いです。MIDI打ち込み仕上げのクオリティ上昇に役立ちます。

打ち込み内容が現実的であるべき理由などありません。

 

実物のピアノ(や高性能なピアノシンセ)では和音の濁りをハーフペダルで解消し、それが無いならノートの長さを任意に指定することでサウンドを改善できます。

妙なリアリティにこだわって出音が悪いなら、そのこだわりを出音の改善に向けるべきです。

 

・補足。ペダルテクニックは他人に求める技術ではない

なお、生ピアノの演奏・録音でそういう指定をしてはいけません。絶対にダメです!

ハーフペダルのみを指定するのもNGです!

 

ペダルについて口出しして良いのはその人が師匠と認めている人だけです。

ペダルの使用は奏者の任意の判断(身につけてきた演奏スタイル、音楽性)に依存するものです。そこに口出しをするのはピアニストの反感を買うだけです。

 

ピアノのペダルをどのように使用するかは、奏者に委ねられています。

よほど決定的な意図が無い限り、楽譜に書かれているペダル記号も無視されますし、その自由度は当然のものです。(だからと言って楽譜に全くペダル記号を書かないのは不安を招く要因です。無視されるけど書くんです。)

これはエレキギターの奏法やエフェクタ選択が奏者の個性であることと同じです。管楽器や弦楽器でどの楽器をどの運指で演奏するかの選択と同じです。

 

DTM(作曲)でいろいろな楽器の知識があるという理由だけで、その道のプロフェッショナルに口出しをしても、決して良い結果にはなりません。

 

奏者はマシーンではありません。人間です。

しかも感情的で情緒不安定で、エゴの強い音楽家という特殊な人種です。

 

信頼し、褒めた方が良い演奏をしてくれます。

どうしても違った演奏スタイルが欲しいなら

「さすがですね……やっぱりプロの人だと違った演奏スタイルとかもできたりするんですか?」

くらいにしておいた方が良いはずです。(あなたのキャラクターにもよる。)

 

ディレクションとは命令ではありません。ダメ出しでもありません。

共同作業で舵取りをするのがディレクションです。

奏者の演奏を聞いて、そこから奏者の提案する音楽性を感じ取り、融和と共感のために意見をとりまとめるのがディレクションの真髄です。

 

まーペダル技法にまで踏み込んで徹底的にやりたいなら自分で弾くか、弾けないなら打ち込みで朝までやれよ、って話です。

 

■打ち込みピアノのミックスにおける重大な問題

「音域パン」になっているピアノ音源は、まずパンを狭くしましょう。

DTM用途の音源は、音源を立ち上げた直後の状態で派手な音が出るように設定されているものがあります。ピアノ専用音源だけではなく、汎用マルチ音源でも同じです。

そうした音色設定だと、左右の鍵盤の移動に併せて大きなパンが振られていることがあります。

某音源だと、通常の伴奏で使う音域を左右の手で演奏した想定の打ち込みをしている程度なのに、あからさまに左手の音が左から、右手の音が右から聞こえるものさえあります。

 MIDI音源としてピアノの派手さを出す場合にもっともイージーな方法なので多くの音源で採用されてしまっています。ひどい人だと「音域パンになっていないピアノ音源は安物」とか主張している人さえいます。気をつけましょう。

そもそもの話として、確かにピアノの内部では左側に低音の弦が張られていますが、「その鍵盤の位置から発音しているわけではない」ということです。弦が存在する位置は、概ね奏者の前方45度程度の幅です。

 

さらに言えば、低音の弦は低音鍵盤の位置からまっすぐ配置されているわけではなく、斜めに内側に向かっています。あからさまに低音が左から聞こえるのがいかにおかしなことか知るべきです。

ミックスに付随するステレオ音響知識(や音響心理学)に少しでも触れた事がある人なら分かるはずですが、低音というのは定位の明確さを失うものです。

 

下のサイトを一度読んでみることをおすすめします。

http://www.ceres.dti.ne.jp/~warnerg/SHOBI/TOSS/02/piano.htm

 

そもそも、「ピアノは音域パンにする」というのは特殊なミックス方針です。

ソロ曲で空間を埋めるための手法です。バッキングではかなり狭く、よもすればモノラル方針でさえ構いません。

 

ついでに余計なことを言うと、そういうミックスをする人に限ってMS処理が大好きで、しかも下品なMS処理をします。

結果としてピアノの左右の広がりが最悪の形で演奏されてしまいます。

 

もっと丁寧にやりたいならステレオやMS対応のEQでセンターロー以外を制御すれば良いと思います。 また、広すぎる場合は一度狭くしてみるべきです。

 

■作編曲段階での注意点

大きく分けて3つの方針があります。

  1. リアルなピアノ(プロ奏者が両手でちゃんと演奏できる内容)
  2. 演奏不能でも構わないので、曲のスキマを埋める目的
  3. 3本以上の腕が必要になるが、サウンドが良好なピアノメイン曲

「ベキ論」で考える人は1以外はありえないと主張しますし、教科書を書いたりレッスンで作編曲を教える立場の人としては2と3を推奨することはできません。模範例を示すべき立場ですので、邪道の話をするべきではないからです。お察しください。

 

が、実際に世の中で流れている曲を聞くと、2と3の例は非常に多く存在しています。

「存在している」というのは、無料同人ゲームのBGMとかそういう場末の話ではなく、テレビの有名番組のBGMや映画音楽等でもあることです。

 

そもそもの話として、作編曲は2つの方針があります。

  1. 生演奏を想定している
  2. 生演奏を無視する

実際にステージですべてを生演奏することを想定していない場合には2が可能です。

 

御存知の通り生演奏の中にも「4手ピアノ」「多重録音」などの飛び道具的な表現があります。

そうした特殊な技術の運用は積極的でも良いのですが、効果的になる場合とナンセンスさが浮き彫りになってしまう場面があります。

ピアノに対するスコアの書き方が未熟なうちは、「実際に演奏可能な曲」を難易度別に幾つか作ってみたり、実在するピアノ曲のスコアを確認してみるべきでしょう。その上で新たな表現技法として4手や多重録音を想定する、というのがベストなスキルアップです。

まともに書けない理由を「この曲は4手ですからー」「私の曲って超絶技巧系ですからー」と主張しても説得力がないし、聞く人が聞けばナンセンスな内容であることのほうが強く聞こえてしまいます。

 

■エレピのオートパンの話

過去記事。

 

eki-docomokirai.hatenablog.com

 

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