eki_docomokiraiの音楽制作ブログ

作編曲家のえきです。DTM/音楽制作で役立つTIPSを書いています。

DTMのピアノ音源の処理方法(1)

DTM、ミックスに関する記事です。

DTMで使うピアノ音源のミックスにおける重大な注意点です。

(2022年8月27日更新)

(リンク先消失は放置します。) 

■結論を先に

ピアノの音は

右から高音が聞こえるわけではありません。

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以下、クソ長い詳細。

MIDI打ち込み段階での注意点

基本的な打ち込み方針については、frenchbreadさんが優れたTIPSを書いているので、そうした記事を幾つか参照してみると良いと思います。

 (リンク先消失は放置します。) 

frenchbread.hatenablog.com

frenchbread.hatenablog.com

 

frenchbread.hatenablog.com

そうした点を踏まえた上で、気をつけたほうが良い点がいくつか紹介しておきます。

 

■ベロシティにヒューマナイズを付けたい場合の注意点

・ベロシティの上質化

手弾きやMIDI編集によるランダマイズで、ジャストのデータを「上回る」のは大変なことです。

ピアノタッチではないMIDIキーボードを使ってタッチ感を出したい場合、たいていのMIDIキーボードではまともなベロシティ感を与えられません。雑なMIDI編集ではほぼ例外なくヘタクソ感が出てしまうだけです。

質の良いピアノタッチ鍵盤+それなり以上の腕がある場合のみ良い方向に行ける可能性が出てくる、と思っておくべきです。

なお、MIDIにはレイテンシーがあります。ポンと弾いた音がそのままDAW内で狙った位置に入力されることはまずありません。どうせ後で編集しないと使い物にならないです。

なお、私は手弾き一発でまともなデータ入力(リリースできるレベル)ができている人をほとんど見たことがありません。DTM初心者騙しのセミナーなどで曲芸作曲をやっている人がいますが、あれは事前練習込みのパフォーマンスです。

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適当に雑に弾いただけでは使い物になりません。

曲のシーンごとの大まかなベロシティを決めた上で、上のリンク先記事のように組み立てると良いでしょう。

その方法なら誰でもベタ打ちを「上回る」ことができます。

・ただし、タイミングとデュレーションには使える可能性がある

ベロシティについては上記のとおりオルガンタッチの軽い鍵盤では徒労に終わる事の方が圧倒的に多いです。

しかし、打鍵タイミングについては軽い鍵盤でもそれなりの効果があります。

また、鍵盤の押さえ終わり(ノートオフ、デュレーション)もそれなりに表現できます。ノートオフのタイミングの重要性については後述します。

 

・「タイミングのみ取得」は鍵盤が弾けなくてもそれなりの効果がある

コードチェンジしながら上手に演奏できなくても、適当に3つ4つの鍵盤をリズミカルに叩くことはできるはずです。そういう演奏で「ノートオンのタイミングのみ」をデータ化し、それから音程をマウスで移動させて適切な音程にしていく、というやり方もあります。

これはまともに鍵盤楽器の練習をするよりも効率的です。

実際問題として、鍵盤楽器の経験が浅い人が正確なコードチェンジを演奏するのは大変なことです。

特にクリエイティブなアイディアに満ちた複雑な曲を演奏してRECするなんて、プロ級の演奏能力が無いと無理です。

DTMやるなら鍵盤くらい弾けないとダメ」と言う『ベキ論』を叫ぶ人たちがいますが、バカじゃないかと思います。同じ『ベキ論』を論じるのであれば、DTMで作編曲をするために必要な演奏技術とはどのくらいの水準なのか、一度真剣に考えてみるべきです。

 

和音の下から順に「じゃらーーん」とやる場合、ほぼ間違いなく曲に合わないスピードになります。これは入力レイテンシーも影響していますが、多くは演奏の腕の問題です。ちゃんと曲にあったタッチで鳴らすのって大変ですよ。

 

これについてはまたそのうち個別の記事を書きます。たぶん。

 

・ニュアンスを変えたいだけならランダマイズだけで問題無い

ベタ打ちの硬さを除去したいだけなら、シンプルなランダマイズだけで「ばらけ感」は出ます。

ワンタッチで終わってしまうので不満を抱く人もいるようですが、それは心理的な問題でしかありません。

何度も言っているとおり、こういうシンプルな方法を「上回る」演奏技術を持っている人はきわめて稀です。

 

■ノートオンとノートオフの価値は同等と思え!

良いピアノ音源を使っているのになんか変だなーと感じるとしたら、それはノートオフのせいです。

もちろんベロシティやノートオンのバラしも重要なのですが、ノートオフによる表現についても研究してみて欲しいです。

ノートオンをバラす手法は少しでも打ち込みをやったことがある人なら知っていることです。

もはや常識レベルなので私はレッスンでもいちいち指導することはありません。

重大な差はノートオフの扱い方です。

 

ピアノに限らず鍵盤楽器というのはコード演奏をする時に指が離れている時間が長い楽器だと認識しておくべきです。(上のリンク先、frechbreadさんの作例をもう一度確認してみてください!単純な四分音符でも、ちゃんと指が離れる演奏になっているのをピアノロール画像で確認できます。)

 

ノートオンがバラバラになっていていることを当たり前に処理できるようになったら、その場面にある音符の並びによっていかに音を短くするべきか?ということを課題にしてみてください。

ピアノが打ち込みくさく聞こえる原因の半分はノートオンのタイミング。残り半分はノートオフの長さです。 

・ノートオフタイミングの重要性を学ぶ方法

ためしに「一定のベロシティのピアノのデュレーション(ノートの長さ)だけを変更して良い」という縛り条件で、いかにリアリティを出すか?という実験をやってみてください。ヒューマナイズにおいてノートオフがいかに重要かということを実感できるはずです。そういう実験で手に入れた感覚は、ベロシティやペダルを活用するとさらにすばらしい演奏を可能にします。

 

デュレーションというと「ベースのグルーブ表現のことですか?」「ブラスのキレ?」と思うかもしれません。ベースとブラスと鍵盤のデュレーションはどれも意味が異なります。楽器の性質の違いについて考慮してみると、鍵盤楽器デュレーションを良く表現できるはずです。 

■サステインペダルに対する誤解

ちゃんとしたピアノのペダルはオンオフだけではありません。ハーフがあります。

ハーフの時にもそれなりに音の響きが得られるので、ペダル踏み切る前にも響きがあり、ペダルを話し始めてから完全に離れるまでの間にも響きが強調されます。ハーフペダルが無い音源でも、

イメージ先行でコードを切るための細かなオンオフを書いているとナンセンスになることがあります。

リズミカルなバッキングでのペダルはおおむね拍に従ってシンプルに組み立てれば良いのですが、メロディやオブリ要素がある時のペダルは独特の感性が必要となります。

 

下の書籍が割りと詳細にペダルテクニックについて解説しています。

私がピアノのペダルについて学習する時に数冊読んだ中の1冊で、おすすめです。

(リンク先ショップが消滅のため、Amazonに変更しました。)

ピアノ奏法:音楽を表現する喜び Der Weg zum lebendigen Klavierspiel.
井上直幸 著
174p. イラスト・譜面多数
東京:春秋社 1999. ボード装丁
ISBN:4393937457

 

ハーフペダルに対応していないピアノ音源の場合、ノートタイムを非現実的に扱う(特定の指だけ長く/短くする)方法が良いです。MIDI打ち込み仕上げのクオリティ上昇に役立ちます。

打ち込み内容が現実的であるべき理由などありません。

 

実物のピアノ(や高性能なピアノシンセ)では和音の濁りをハーフペダルで解消し、それが無いならノートの長さを任意に指定することでサウンドを改善できます。

妙なリアリティにこだわって出音が悪いなら、そのこだわりを出音の改善に向けるべきです。

 

・補足。ペダルテクニックは奏者に指定するべきではない

なお、生ピアノの演奏・録音でそういう指定をしてはいけません。絶対にダメです!

ハーフペダルのみを指定するのもNGです!

ペダルについて口出しして良いのはその奏者が師匠と認めている人だけです。演奏スタイルそのものの変更を求める行為だからです。

ペダルの使用は奏者の任意の判断(身につけてきた演奏スタイル、音楽性)に依存するものです。そこに口出しをするのはピアニストの反感を買うだけです。

 

ピアノのペダルをどのように使用するかは、奏者に委ねられている、と認識を改めるべきです。

よほど決定的な意図が無い限り、楽譜に書かれているペダル記号も無視されますし、その自由度は当然のものです。(だからと言って楽譜に全くペダル記号を書かないのは不安を招く要因です。無視されるけど書くんです。)

これはエレキギターの奏法やエフェクタ選択が奏者の個性であることと同じです。管楽器や弦楽器でどの楽器をどの運指で演奏するかの選択と同じです。

 

DTM(作曲)でいろいろな楽器の知識があるという理由だけで、その道のプロフェッショナルに口出しをしても、決して良い結果にはなりません。

 

奏者はマシーンではありません。人間です。

しかも演奏者というのは感情的で情緒不安定。エゴの強い音楽家という特殊な人種です。おそらくはDTMをやっているあなた以上にイカれてます。少なくとも、単一の楽器については作曲家より圧倒的に詳しいです。そのプライドを刺激してはいけません。

 

信頼し、褒めた方が良い演奏をしてくれます。

どうしても違った演奏スタイルが欲しいなら

「さすがですね……やっぱりプロの人だと違った演奏スタイルとかもできたりするんですか?」

くらいにしておいた方が良いはずです。(あなたのキャラクターにもよる。)

 

ディレクションとは命令ではありません。ダメ出しでもありません。

共同作業で舵取りをするのがディレクションです。

奏者の演奏を聞いて、そこから奏者の提案する音楽性を感じ取り、融和と共感のために意見をとりまとめるのがディレクションの真髄です。

 

まーペダル技法にまで踏み込んで徹底的にやりたいなら自分で弾くか、弾けないなら打ち込みで朝までやれよ、って話です。

・ペダルについての興味深い動画

「あの曲でペダルを使わないとどうなるか?」という実験です。

www.youtube.com

DTMの人は根本的にピアノのペダルとデュレーション(鍵盤を押している長さ)について勘違いをしている人が多いです。 あと運指も。

より「その楽器らしい演奏」をさせたいなら、楽器1つ1つに対して、それなりの時間をかけて勉強をしなければいけません。

 

■広すぎるステレオ幅に気をつけろ!

「音域パン」になっているピアノ音源は、まずパンを狭くしましょう。

DTM用途の音源は、音源を立ち上げた直後の状態で派手な音が出るように設定されているものがあります。ピアノ専用音源だけではなく、汎用マルチ音源でも同じです。

そうした音色設定だと、左右の鍵盤の移動に併せて大きなパンが振られていることがあります。

 

具体的に言うと、普及率が高いKontakt付属音源のGrandeurが戦犯です。

Grandeurなどのピアノ音源は、あからさまに左手の音が左から、右手の音が右から聞こえるので、絶対におかしいです。安価で音が良いので使用している人が非常に多いようですが、デフォルトのままミックスするのは絶対にやめましょう。

 

下の動画はKontaktライブラリを中心に、20種類のピアノ音源聴き比べ。

すべてデフォルトのまま鳴らしています。特に聞いて欲しいのは音域によるステレオ幅です。

www.youtube.com

MIDI音源としてピアノの派手さを出す場合に「音域自動パン」は最もイージーな方法で実装できるので、多くの音源で採用されてしまっています。

そりゃそうですよ。メーカーは派手に見せて売るのが仕事ですから。マクドナルドの写真と現物の差のようなものです。

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そういう安易な派手さに洗脳されてプラグイン音源を選ぶ人でひどい人だと「音域パンになっていないピアノ音源は安物」とか主張している人さえいます。気をつけましょう。

派手に音域パンしているピアノ音源はソロ演奏では聞きばえしますが、バンド等の中でミックスすると邪魔にしかなりません。まずほぼモノラル化し、その上でマイキングや空間処理を活用してワイド感を与えていく方が圧倒的にミックスばえします。

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そもそもの話として、確かにピアノの内部では左側に低音の弦が張られていますが、「その鍵盤の位置から発音しているわけではない」ということです。弦が存在する位置の幅は概ね奏者の前方45度以下の幅です。

 

さらに言えば、低音の弦は低音鍵盤の位置からまっすぐ配置されているわけではなく、斜めに内側に向かっています。あからさまに低音が左から聞こえるのがいかにおかしいかを知るべきです。

ミックスに付随するステレオ音響知識(や音響心理学)に少しでも触れた事がある人なら分かるはずですが、低音というのは定位の明確さを失うものです。

 

下のサイトを一度読んでみることをおすすめします。

http://www.ceres.dti.ne.jp/~warnerg/SHOBI/TOSS/02/piano.htm

こちらもどうぞ。

soundbytesmag.net

さらにこちらも。

tokyodtm.com

またピアノの低音が左chから出ているのに高音が右chから出ている場合(ピアノのソフトシンセではよくある設定)、オーディエンスはピアノの中に顔を突っ込まない限りそうした聞こえになりません。(更に厳密に言えばグランドピアノはプレイヤーから見て左から低音が鳴っているわけではありませんが)

という具合に、私個人の超理論ではなく、他の人も同じことを言っているので信じてもらってOKです。もしDTM「er」の横つながりがみんなピアノの音を広くしていたとするなら、あなたの情報源を変えましょう。

 

 

そもそも「ピアノの音域によって左右にパンにする」のは特殊なミックス方針です。ソロ曲で空間をリッチにするための手法です。一般的なポピュラー音楽での伴奏ピアノではかなり狭くするのが普通です。極端に言えばモノラルでも構いません。

 

たとえばこういう演奏のミックスでは左右幅を広く、ソロでもリッチに聞こえるようにしています。これはかなり誇張されたソロピアノのミックスです。

www.youtube.com

主役ピアノ+オケだと次のようになります。

ピアノは想像以上に「プア」な音で開始されます。2分以降でフルストリングスとの融和を聞けます。

www.youtube.com

 

Twitterでもちょうどよくリアルな情報があったのでご紹介。

画像

https://pbs.twimg.com/media/FA9DhOxVkAECbZd?format=jpg&name=4096x4096

別角度の写真がもう1点。(同氏、Facebookより。URL割愛。引用元URLや関連する人物名等の明記をご希望の場合にはご連絡ください。)

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見ての通り音域を左右にパニングするマイキングではありません。

写真で見えているマイクはすべて蓋裏を狙った、発音体から遠め主体の「オフマイク」です。

もちろん写真手前側は長い低音弦を良く拾う音になりますが、弦ではなく蓋の反射を狙っているので極端な左右音域にはなりません。

奏者に近い側のマイクも50cm程度のオフ距離。狙い先も奏者正面中央ですので、上述のDTM音源のような「低音は左、高音は右」には決してなりません。

 

なお使用ピアノはベーゼンドルファー・インペリアル。めっちゃ良いピアノでの演奏です。低音の追加鍵盤も多いけど価格もゼロが多い。

piano.miki.co.jp

 

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ついでに余計なことを言うと、安易なミックスをする人に限ってMS処理が大好きで、過剰なステレオ誇張をする傾向が極めて高いです。結果としてピアノの左右の広がりが最悪の形で演奏されてしまいます。

 

もっと丁寧にやりたいならステレオやMS対応のEQでセンターロー以外を制御すれば良いと思います。 また、広すぎる場合は一度狭くしてみるべきです。

 

そういう点において、ADKey等の方が適切なパニング設定になっています。「低音の鍵盤のパニング処理」という点にのみ注目しながら、知っているピアノ音源の出音を再確認してみてください。

 

より極端に言えば、ピアノをモノラルにしてからリバーブするのも悪くありません。実際モノラルでミックスされている曲は非常に多いです。ピアノが主役にならないなら、モノラルのアコギなどと同様に処理してしまう、という方針です。

 

ちゃんとプロの音を参考にしましょう。

マチュアDTM「er」の音を参考にするのは絶対にやめましょう。

 

■作編曲段階での注意点

大きく分けて3つの方針があります。

  1. リアルなピアノ(プロ奏者が両手でちゃんと演奏できる内容)
  2. 演奏不能でも構わないので、曲のスキマを埋める目的
  3. 3本以上の腕が必要になるが、サウンドが良好なピアノメイン曲

「ベキ論」で考える人は1以外はありえないと主張しますし、教科書を書いたりレッスンで作編曲を教える立場の人としては2と3を推奨することはできません。模範例を示すべき立場ですので、邪道の話をするべきではないからです。お察しください。

 

が、実際に世の中で流れている曲を聞くと、2と3の例は非常に多く存在しています。

「存在している」というのは、無料同人ゲームのBGMとかそういう場末の話ではなく、テレビの有名番組のBGMや映画音楽等でもあることです。

 

そもそもの話として、作編曲は2つの方針があります。

  1. 生演奏を想定している
  2. 生演奏を無視する

実際にステージですべてを生演奏することを想定していない場合には2が可能です。

 

御存知の通り生演奏の中にも「4手ピアノ」「多重録音」などの飛び道具的な表現があります。

そうした特殊な技術の運用は積極的でも良いのですが、効果的になる場合とナンセンスさが浮き彫りになってしまう場面があります。

ピアノに対するスコアの書き方が未熟なうちは、「実際に演奏可能な曲」を難易度別に幾つか作ってみたり、実在するピアノ曲のスコアを確認してみるべきでしょう。その上で新たな表現技法として4手や多重録音を想定する、というのがベストなスキルアップです。

まともに書けない理由を「この曲は4手ですからー」「私の曲って超絶技巧系ですからー」と主張しても説得力がないし、聞く人が聞けばナンセンスな内容であることのほうが強く聞こえてしまいます。

■その他、定番のピアノ加工

ピアノ音源は大きく分けて「ポピュラー用」「純粋クラシック用」に分けられます。

ポピュラー用は複数マイキングを含めて、明るく近い音像のものが多いです。そういう音を純粋クラシック音に戻すのは非常に困難です。諦めましょう。

明るいピアノ音で仕立てた曲を作ることに専念した方が良い結果になります。

 

逆に、純粋クラシック音が出るPianoteqなどをポピュラー音に持っていくなら、

  • ローカット(50~100以下適時)
  • ハイ上げ(ハイシェルフ。カーブ品種、モデル差に注意しつつ)
  • 必要に応じてローミッド(100~200)

を適度に抑制して、極めて明るい音色にすればそれなりに使える音になります。プリセットのEQなどを良く観察すれば、共通点が見えてくるはずです。

 

下はあるJPOP曲の完コピの際にPianoteq7 Steinway Dを加工した例。

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マジメにミックスの教科書で独学している人にとっては「こいつ頭おかしいんじゃねーか?本当にプロかよ草」と思うほどのロー低減をしています。が、これでほぼ完璧に同じ音色になっています。

言うまでも無く鳴らしているのはPianoteqのすっぴん音色からの加工なので、あなたが使っているピアノ音源で同じ加工をすると狂った音色になるかもしれません。上の画像には数値も記入していますが、ミックスで何より大事なのは「加工する数値」ではなく「元のソースに何を加工したか」です。あなたのピアノ音源に同じ数値の加工をしても全く無意味です。

 

結果として得られるのが下の「かまぼこ」形状。f:id:eki_docomokirai:20220403090652p:plain

ローにはベースがいるので譲り、なだらかにハイが落ちていく。カマボコというより「均等なドーム型」です。最も聞こえやすい3000Hz辺りはかなり「譲った」形状になっています。

これ以上ハイ上げをすると、たしかにピアノ単体は気持ちよく聞こえるかもしれませんが、ミックス全体を邪魔してしまう形状になってしまいます。

たまにオブリで高域が欲しい時は強く弾けば良いし(演奏アプローチ)、そもそもピアノオブリの瞬間に他の楽器が存在しなければ良い(アレンジアプローチ)というミックスよりも大きな影響力を持つアプローチをしていくのが正解です。なんでもかんでもミックスで片付けようとしてもおかしなサウンドになっていくだけだということを悟りましょう。そういう経験は自作曲より完コピから学べます。

 

ハイシェルフはEQのモデルによってカーブ形状が大きく異なるので、必要に応じて4000以上にベルカーブを設置して明るさを追加しましょう。(こういうカーブが綺麗に出るからパルテック系、ベクサンドールカーブ(バクサンドール、バクサーデール、Baxandall)などが良いと勧める人が多いのだと思います。

特に「このモデルを使わなきゃダメ!」ということは一切無く、ようするに「ゆるいハイシェルフ+ゆるいベルカーブ」を組み合わせてみれば、必要十分な音色になります。EQ沼にはまり込まないように気をつけましょう。

新しめのEQプラグインだと、非常にシャープなシェルフカーブが使えますが、必ずしもシャープな角度が優れているわけではありません。むしろ「ゆるいEQカーブ」をいかに使うかだと思った方が正解に近いです。

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■エレピのオートパンの話

過去記事。

個人的な体質として、オートパンのきついエレピ音を受け付けられない人が居ます。

eki-docomokirai.hatenablog.com

 

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■他の人のアプローチ

ピアノソロ曲でピアニストはこうアプローチしてる。非常に勉強になる内容です。

type00k.com


生録音のピアノの話。打ち込みピアノでも部分的には使える方法論が書かれています。

www.musicianonamission.com

 

■検索用単語置き場

ピアノのミックス、ピアノミックス、Piano mix

 

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