eki_docomokiraiの音楽制作ブログ

作編曲家のえきです。DTM/音楽制作で役立つTIPSを書いています。

面倒な作業を実行するためには、まず手を動かす

先日Twitterで「面倒だと思ったことをやるだけで必ず作品は良くなる」というメソッドの談義がありました。

これは音楽制作に限らず、学校の勉強でも、楽器演奏の習得でも共通しています。
過去にゲーム制作を一緒にやっていた知人も同じことを熱弁していて意気投合した共通のメソッドです。サラリーマンやってた時の上司や、番組制作をやっていた時の同僚も同じことを言っていました。

あまり脱線して異分野の話を引き合いに出しても雑学にしかならないので、いわゆるDTMでの音楽制作における「めんどうな作業」についてのみ記しておきます。

過去のブログ記事を移転し、加筆・修正したものです。

(2018年6月16日更新)


■認識の段階

まず一番大事な点は、「今やるべき作業」の内容と目的地を正しく認識できていないことを認めることです。

 

認識の初期段階と、それを否定する言い訳を列記してみます。

  1. なんか良くならないなぁ → 「それで良いんだよ。音楽は自由!」
  2. 原因は何だろう? → 「付属プラグインだから音が悪い!(高い最新プラグインを買えば良くなる!)」
  3. ここを直せば良いかも? → 「そんなのやっても無駄」
  4. こういう直し方はどうだろう? → 「プロはそんなことしない(伝聞知識)」

 1では「なんか良くならないなぁ」という不満を認識できています。
しかし「音楽は自由!」という言葉を都合よく適用して上達することを否定してしまうことがあります。


2では「原因」について思いをめぐらしています。
しかし「道具が悪い」という自分の外側が理由だと決めつけ、丁寧な作業と反復による上達を否定しています。

3では「ここを直せば良いかも?」と原因箇所を特定しようと試みています。
しかし「やっても無駄」とネガティブに考えてしまい、やる前から諦めてしまうことがあります。


4では「直し方があるはず」と具体策を模索しています。
しかし「プロはそんな直し方をしない」という聞きかじった身の丈に合わない知識を引用して、上達の道を閉ざしてしまっています。

 

このように、認識には段階があります。そしてそのすべての段階で否定が可能です。

否定することが目的なら、それはそれで楽しいかもしれませんが、上達することができません。

ジョギングしている人を見て「あんなことやっても無駄」と言っているのと同じです。

頑張っている人を見て「無駄なことしてる」と言って、自分の方が賢いと思い込むのと同じです。

 

ここで注目するべきは「あらゆる言葉は否定することができる」という事実です。

なぜかというと、「前向きな姿勢を否定」することが可能なのだから、「後ろ向きな言葉を否定」することも可能だからです。「否定を否定すれば肯定になる」ということです。

頑張っている人を「あんなの無駄な努力だね」と否定できるのと同様に、何の努力もしないで批判ばかりしている人を「否定するくらいならやれば良いのに」と更に否定できるということです。

まぁ屁理屈な言葉遊びや自己欺瞞にすぎないのですが、うまい具合に自分を騙してでも良い行動をとるきっかけにすれば良いわけですから。

否定の感情とうまく付き合いましょう。

 

否定の否定

「否定的な言葉に対して言い返すための言葉」を追記してみます。

  1. なんか良くならないなぁ → 「それで良いんだよ。音楽は自由!」
    (否定を否定)→ 「上達するのも自由!!」
  2. 原因は何だろう? → 「付属プラグインだから(高いプラグインを買えば良くなる)」
    (否定を否定)→ 「弘法筆を選ばず!!」
  3. ここを直せば良いかも? → 「そんなのやっても無駄」
    (否定を否定)→ 「とりあえずやってみよう。何事も経験!!」
  4. こういう直し方はどうだろう? → 「プロはそんなことしない(※伝聞知識)」
    (否定を否定)→ 「時間はあるんだからいろいろやってみよう!!」


このように否定を否定することでネガティブな言葉に立ち向かうことができます。

 

おまえらの大好きな屁理屈を上手に使いましょうってことです。

 

「明るく元気な模範的なポジティブ思考の優等生になれ」という提案ではありません。
自分が根本的にひねくれている根暗DTMerだということを自覚し、否定という行為を徹底的に突き詰めれば良いだけです。


何をやるべきか、何を素通りしていたかは、他人に言われれば分かることです。
レッスンや作曲知人からのダメ出しチェック依頼があった時に「ここが◯◯ですよ」と言うと95割のケースで「あー、そこねー、やっぱり気になるよねー」という返事が来ます。
みんな自分で分かってるんですよ。分かっているけど色々と言い訳を考えて直さない。

 

■音楽制作で面倒な作業とは?

では本題。

面倒な作業にどう立ち向かえば良いでしょうか?

 

まずは思いつく限りの作業工程を列挙してみましょう。

これらすべてに対して「面倒くせぇ」「やっても意味ないよ」と否定する言葉を考えてみてください。

それをさらに否定して実行するための「否定の否定」を可能にする屁理屈で打ち消しを行ってみてください。

 

・作曲、作詞で面倒なこと

歌詞と音符のミスマッチ解消
1番と2番で異なる歌詞に最適化したメロディに部分改変
ブレス箇所の全チェック
キーの最適化
歌詞の誤字チェック

 

・作曲、理論で面倒なこと

コードのチェック
和声のチェック
チープな音源、同一音色、モノラルで聞いて理論チェック

 

・作曲、構成で面倒なこと

仮に入れただけのイントロや間奏を作りなおす
蛇足箇所を削除/改変

 

・編曲、楽器で面倒なこと

編成の想定
楽器の出入り
音域と運指のチェック
メロディとオケのマッチング

 

・打ち込み、シンセで面倒なこと

音源差し替え
差し替え後のMIDI最適化
音色の部分変更
レイヤー
ソロ専用音色に部分さしかえ
同属楽器のトラック分割

 

・打ち込み、作りこみで面倒なこと

ベタ打ちをやめる
ベロシティレイヤーのチェック
繰り返し箇所をコピペにしない
フィルを毎回変える
アタックタイミング遅れの補正

 

・演奏仕上げで面倒なこと

トラック個別で聞いて粗探し
MIDI演奏を一度オーディオ化する
フェードアウトを丁寧に
メロディをミュートしてオケチェック

 

・ミックスで面倒なこと

ミックス前段階での各種処理
無音化するべき箇所のチェック
トラック間位相の解消
各種オートメーション
同楽器のトラック分割
重量級プラグインを途中段階で使い、一度オーディオ化する

 

・ミックス、空間エフェクトで面倒なこと

チャンネルとセンド音量のバランス

ディレイ/リバーブを複数用意する

インサートディレイ(リバーブ)を考慮する

ディレイ等によるコード濁りの解消

 

・マスタリングで面倒なこと

丁寧な2mix段階で一度オーディオ書き出し
リファレンス参照
複数環境でのモニター
前後無音部の長さ

 


(項目名称の定義は人によって異なるので、極めて個人的な呼称の箇所があります。ご容赦ください。「アレが無い、コレが無い」とツッコミしたい人はご自由にどうぞ。)

 

レッスンで指摘することが多いある項目を中心に書き出してみました。
上記の項目についてセルフチェックをしてみるとドM的には割りと楽しいのでおすすめ。

 

■集中は盲目

制作をやっていると色々なことに頭を使います。
今やるべき作業や、直前に終わらせた作業について多く考えてしまうので、ついつい素通りしてしまうんです。何かに集中すると、何かを見落としやすくなる。「集中は盲目」ということです。

そういうことがあるので私の場合は、瞬時にメモできるように紙とペンを常備しています。
何かの作業をしている時に、その作業と関係ない部分だけど後で直す必要があると思ったら、
「78小節、コードミス」とか
「113秒、残響消し」
「B、シンセ、ハイ下げ」
「間奏ギター最後ディレイ」
という感じでメモを残すようにしています。

こうすることで場当たり的に手を動かさなくても済むようになります。

 

なので「最強のDTMツールは紙とペンでしょ!」とジョークを言うことがあります。

確実に曲をワンランク上にできるのですから、どんなプラグインよりも強いですよ。

「今やるべきこと」と「今は無視するべきこと」。
すべてを2つに分けてしまえば、認識力は正しく発揮されるものです。

超人的な完璧さを捨てることです。人間の文明は分業によって進化しました。

散漫さを封じることです。人間は基本的に散漫です。

 


■今やる作業は何?

認識について考えることの重要性はここまでに書いた通りですが、もっと重要なのはとにかく手を動かすことです。

上記の各種項目のどれを片付けるかを決めて、とりあえず作業に着手してしまえば、あとはマシーンのようにそれをやっつけるだけです。

 

blog.tinect.jp

上の記事では、

「とりあえず5分やってみるとやる気が出てくる」ということが書かれています

これはつまり「気分」「マインド」が先ではなく、「行動することでやる気が出る」という、従来のイメージと逆の主張だ。

確かに個人的にこれは思い当たるフシが数多くあり、「やる気がでない」と言う言葉は、単純に「まだ始めていない」の単なる言い換えに過ぎないと感じる。

つまり、

「勉強のやる気が出ません」⇒まだ勉強を始めていません

「仕事のやる気が出ません」⇒まだ仕事を始めていません

ということだ。

本質的には「始めさえすれば」やる気は自然に湧いてくるのである。つまり、仕事、運動、習い事、何にしろ大変なのは、「最初の一歩」だ。

 

上のリンク先記事は別途読んでおいてください。

 

それを踏まえた上で私のやり方を付け足しておきます。

 

項目が1つ終わるまで、他のことを一切考えずに遂行します。考えるのはその後です。
意外に思う人もいるかもしれませんが、「項目つぶし」のスタイルで作業をしていくと、必ずいい方向に進みます。あれこれ考えながらやっていると、最終的にクオリティがばらばらになってしまい、説得力のない仕上がりになってしまいます。


ニコ生でDTM作業をやっている人を見ていてよく思うのがこの点です。
歌もののオケに入れるピアノを書いていたはずなのに、コメントで「ハイハット大きすぎじゃないですか?」などのコメントがあるとドラムの編集作業に移行してしまうパターン。
まぁもちろんニコ生を配信しながら作業をしている時点でそれほど入れ込んだ作業をする気分じゃないということは明白なのですが、飛び飛びの作業で作っていると本当に全体のクオリティに歪が生じるのでやめたほうが良いと思います。

一番極端な例で言うと、ギターを弾いて録音しているのにコメントで「ハイハット大きすぎじゃないですか?」とコメントされたらギターを置いてドラム打ち込み作業に移行してしまう。まぁ流石にそこまでおかしい人は見たことがないですが、ギターを弾く時はギターを弾く。打ち込む時は打ち込む、ということです。

 

この極論から考えれば「今はAについて作業しているから、Bについては考えない」というメソッドのメリットは分かってもらえると思います。その延長線上にあるのが「今からやる”面倒な作業項目”は何か?」です。

 

  • 作業する時は作業する
  • 打ち込む手を動かす
  • チェックする時はチェックする
  • 品質チェック担当者を演じきる

 

なんとなく曲頭から再生して聞き流しても進捗は得られません。疲れたなーと思ってなんとなく再生するくらいだったら、ちょっと散歩や運動をしてみたり、軽い食事をしたりしてリフレッシュに務めるべきだと思っています。

 

■よく考えた上で何も考えない

愚直に目の前のことをやっつけるというシンプルさこそが最強です。

これをジョークめいた言い方で説明する時に私はいつもこう言います。

 

「良く考えた上で、マシーンになる」

「洗練された脳筋プレイ」

 

あれこれ考えている状態って、自分のベストな能力が発揮できていない証拠なんです。考えなくても良い状況にするのが上策です。

もし考えることが好きなら、まずちょっと着手して10分ほどの経験と現場の情報を得た上で、それから考えるべきでしょう。そうすればもっと良いアイディアが浮かぶはずです。

 

あれこれ悩むタイプの人は往々にして頭を使うのが上手ですから、考えてからやるのではなく、やってから考えましょう。その方がもっと良い作戦を立案できるはずです。自分の長所と短所を見極める段階を経て、徹底的にシンプル化を目指すべきです。

 

■10分の作業でフィードバックを得る

何も作業をしていない状態でベストな作業手順を考えても無駄である!というのが私の考え方です。

これは音楽の作業に限らず、あらゆる作業で有効な考え方です。

 

とりあえず10分何も考えずに実行してみることで、より効率的な方法を編み出すことができます。

経験→フィードバック→効率化 ということです。

 

「とりあえず10分作業」で重要なのは、できるだけ何も考えないことです。

また、必ず10分やることです。

 

なぜ10分必ずやるのかというと、10分の中で慣れてくる要素があるからです。

「少しの慣れ」+「フィードバック」によって、最低限の損失で最高の効率にすることができます。

 

・机上の空論を避ける

一見頭が良さそうなタイプの人がよく陥るのは、何も手を動かさないで最高の効率を作ろうとしてしまうことです。また、10分も継続していないのに手順を変更しようとしてしまうことです。

「慣れとフィードバック」という2つの根拠が無いのに、どうして最高効率を得られるというのでしょうか?

 

たとえばCubaseのショートカットをカスタマイズする際に、曲を作りながらカスタマイズしていかないと、どんなに整理整頓されているように思えていても、実際には使いにくい仕上がりになってしまいます。片付けすぎて使いにくい台所のようなものです。

 

MIDI打ち込みの作業の例で言うと、目先のデータの綺麗さや、データ書き込みの丁寧さを重視してしまい、一貫性のない仕上がりになってしまうということです。

とりあえずザーっとやってみて、その結果からフィードバックを得ることで、あなたに合った作業手順、その曲で必要とされる仕上がりにまっすぐ向かう近道がみつかるということです。

 

■がんばれば良いというものではない

 非効率的な作業を延々と続けてしまうタイプの人も多いです。

「長時間の作業をコツコツやったことで得られる達成感」もフィードバックになってしまうからです。

フィードバックを得るのは不可欠ですが、間違ったフィードバックは間違った結論を作り出してしまいます。

これは特にスポーツの分野で問題視されてきました。

例えば、シーズンオフに過度の筋トレをすることや、その筋トレの内容も体を痛めつけたほど優れたトレーニングである、という考え方です。

 

おかしなトレーニングでも成功したスポーツマンは多いですが、それはもともとその選手が強靭な肉体を持っていたというだけのことです。通常のスポーツマンは過酷すぎるトレーニングで潰れてしまい、一流選手になる前に身体を破損してしまうということです。

 

・美しい言葉に騙されてしまう人

これは音楽でもまったく同じです。

もともと音楽センスの良い人はどんなメチャクチャな手順でも良い音楽を作れてしまいますが、多くの一般的な音楽家はおかしな知識の蓄積によって潰れてしまいます。

 

「音楽は楽しく」「音楽は自由」という言葉は非常に美しく希望にあふれた言葉です。短い言葉なので強いインパクトもあります。

しかし、「楽しい」「自由」の意味を履き違えてしまうと、めちゃくちゃな音しか作れない人になってしまいます。

 

 

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■「やる気」とは虚構

r25.jp

リンク先の記事曰く、

「やる気」は脳科学的に存在しない

「行動」があって「感情」が出るのが普通

 

とのことです。

 

これにはまったくもって同意。

ネット上で多い「モチベーションが出ない」「モチベーションが下がる」というボヤき。

身近な人がこういうことを言っていた場合、「とりあえず何か雑務をやろうぜ?」と提案しています。

まぁほぼ100%の場合、そう提案しても「でも、以下略」という『でも論』で対抗されてしまいます。

 

他人に向かってボヤき、提案があったにも関わらず反論する。どう考えてもダメな人だと思います。実際私はそういうタイプの人との交流を極力控えるようになりました。友達は選ぼう。

 

そもそもほぼすべての状況で「モチベーション」という言葉を使う人は「~が出ない」と言います。モチベーションというネガティブな引力に囚われているのではないでしょうか?

 

他に最近よく提案する「やる気がない」の対処は、とりあえず散歩に出てみるというものです。

PC前から離れることで、やらなきゃいけないことが明確になります。散歩の途中で立ち止まって、帰ったらやることを1行だけ書いてみるのも良い習慣になると思います。まじおすすめ。

 

また、アレもコレもと考えすぎず、とりあえず帰ったらコレ!というシンプルさがベストだと思いますよ!

 

まず10分、まず10回操作してみることで「やる気」はすぐに出てくるものです。

騙されたと思って実際にやってみてね!

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