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eki_docomokiraiのブログ

作編曲家のえきです。DTM、音楽制作TIPS、およびゲーム(Diablo3RoS)の話を書いています。

一括編集によるセクションのラフ制作

DTM、コンピューター音楽の制作方法に関するTIPS記事です。

クラシック系のトラック制作で、ストリングスやクワイヤ(コーラス、合唱)を鳴らす時に、細かく音量を書いて表情をつけるのはとても手間のかかる作業です。

そうした作業を手早く終わらせるために、「MIDIルーチング」を使うと便利です。

 

■一括編集は万能ではない

一括編集には長所と短所があります。

今作っている曲にとって求められる仕上がりと、使える時間と相談して、ベストなワークフローを選択しましょう。

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■一括編集のメリット

  • 編集操作の回数、時間を短縮できる
  • 統一感のある仕上がり

 

■一括編集のデメリット

  • 使う頻度の少ないDAW操作を行うので、逆に遅くなる
  • 徹底的に追い込む場合、結局あとで全部編集し直すので無意味になる

 

 

■4回同じことを書かない

一括編集は1回の作業でラフを作り、その後でパート個別に調整を行っていくスピード制作方法です。

セクションの全ての楽器がほぼ同じ動きをする状況では極めて効率的な打ち込み方法です。

 

■ハモり向き

全体がほぼ同じタイミングで運動する「ハモり、和声」で書く場合には今回紹介する方法が手早いです。

 

 

■対位法の場合でも大まかな音量だけ先に作る

対位法的に書く場合など、全ての楽器が全く異なる動きをする場合には個別に作った方が速い場合もあります。

しかし、場合でも「ここは全体的に盛り上がった方が」となることがあります。フォルテとかピアノとかの雰囲気を大雑把に作るだけでも全体の統一感を作れますし、個別に曲線を書いていると、後から書いたパートがどんどん大きくなってしまうことを避けやすくなります。

 

 

 

■古いCubaseでの方法

私は古いバージョンのCubase6系を使い続けています。

Cubaseの新しいバージョンや別のDAWを使っている人は実装方法が異なることがありますので、やりやすい方法でMIDIルーチングを実装してみてください。

 

  1. MIDIのノートは個別のMIDIトラックに書きます
    (古いCubaseではインストトラックからのセンドはできません。)
  2. 音量用のMIDIトラックを用意します
  3. 音量用トラックのインスペクター(画面左メニュー)「MIDIセンド」を開きます
  4. 分岐送信したい音源とMIDIチャンネルを指定します
    ここではKontaktの1,2,3,4に対して送信しています。

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一番上のグレーの部分で音量を書くと、4つのコーラス全ての音量が変化してくれます。

 

この方法で大雑把な仕上がりを作り、どうしても個別に音量を書かなければ対処できない部分が残った場合(それが絶対に許容できない場合)にだけ、音量データを4つのMIDIトラックにコピペし、MIDIセンドを切り、個別対処するワークフローに移行します。

 

■えっ?私のベロシティ、変えすぎ?

音量の制御にベロシティを使おうとする人が多いようですが、近年のよくできた音源は「ベロシティ=音量」ではなく、「ベロシティ=呼び出すサンプル種別」です。うかつにベロシティを変えると、大きい音用のサンプルと、小さい音用のサンプルが混在してしまい、ガタガタの演奏になってしまいます。

 

今時の音源ではベロシティ=音量ではありません!

 

古いMIDIの教科書などで「ベロシティで音量を変えましょう」と紹介している本や、そう教えている先生、ネット記事があります。あなたが今使っている音源でのベロシティがどういう役割なのかをしっかり確かめておいてください。

 

極端な設計の音源だと、ベロシティ最大にすると特殊奏法になってしまうものもあります。

 

■やりやすい方法でやる

他の方法でもMIDIデータの送信先を複数に分岐させることができます。

自分の作業スタイルと、使っているDAWでやりやすい方法でやってみてください。

 

■1トラックで書いてコピペ

通常のMIDI打ち込みのワークフローのまま行えます。

ただし、音量を書いている時に他のパートの音量が変わらないので、将来を予測する能力が必要となります。

 

■全てオーディオ化してからどうにかする

オーディオ化してからの加工を前提とするなら、複数の重量級音源を同時に鳴らさなくても済みます。

低スペック向け、超重量級音源向けの方法です。

音源が要求するスペックは留まるところを知りません。

最高性能のPCを使っていても、新しい音源はどんどん重たくなります。

ちょっと古い音源だとしても、山ほど同時発音させることになるので、結局オーディオ化は必要になります。

 

「オーディオ化を前提としたワークフロー」については、またそのうち書きます。たぶん。

 

■仕上がりの判断基準

こういう作業をしている時、私達はとても神経質な状態になっています。

細かいことをやればやるほど、良い仕上がりになると信じて突き進んでいます。

 

でも、寝て起きて聞き直したら「こんだけやっていれば十分すぎだろ」となるかもしれません。

 

大事なのは「この程度ならOK」という判断を下すことです。

もちろん全てのトラックを徹底的に煮詰めていくことは大事です。しかし、そこまでやっても得られる効果は微々たるものです。

100点満点の中で80点とか70点くらいまで出せているなら、もう仕上がったと判断するべきでしょう。

 

1つのトラック(セクション)に過保護になるのは良くないことです。

他にやるべきトラックがあり、やるべき次の曲があるはずです。

もしくは勉強するべきことや、交流するべき人のことも考えましょう。

 

合格点以上の追い込みが本当に必要なのかどうか、日頃から考えるべきだと思います。

 

■完璧主義?

もしこれを妥協と呼ぶのであれば、そもそも生演奏を使わない時点で妥協ですし、自宅のPCでやっている時点で安っぽく音楽です。

 

完璧主義の人は、どうぞ生演奏でやってください!

一流の音楽家とエンジニアを集め、世界一流のスタジオ・ホールで長期間のリハーサルを行って最高の音楽を作ってください。もちろんその音楽はCDなどにプレスしたら妥協ですので、生演奏でしか鑑賞することを許可されません。完璧を主張するなら、自室のしょぼいオーディオ機器で聞くなど音楽への冒涜ということですよね?

あ、言い忘れましたが、もちろん完璧な音楽に参加する権利があるのは、妥協のない美男美女でなければいけません。平民出身は許されません。人によっては混血や有色人種も認められないと主張する人さえいるかもしれません。完璧主義怖い!

 

そもそも、私達が3歳からピアノを学び、10代で海外留学して一流の環境で音楽の素養を身につけていない時点で、音楽家として不完全ではないでしょうか。

 

という具合で、私は完璧主義を否定しています。

完璧主義という思想の持つ無茶な要求に付き合う必要はありません!

 

どこまで妥協できるか、どの要素だけは必ず入れなければならないか。その線引きを心に持つべきだと私は考えています。

© docomokirai 2017