eki_docomokiraiの音楽制作ブログ

作編曲家のえきです。DTM/音楽制作で役立つTIPSを書いています。

フリーのバスコンプ TDR Kotelnikov

TOKYO DAWN RECORDの TDR Kotelnikov(コテルニコフ)の紹介。
多機能、高品質で重たいバスコンプです。

32/64 VST/AUに対応。内部64bit処理にも対応。今のところフリー。

(2018年10月15日更新)

■入手

フリーです。有料版(Gentleman Edition)もありますが、フリーでも他社有料版コンプを凌ぐ性能です。

www.tokyodawn.net

2018年10月15日現在、バージョン1.5.1。

以前のバージョンより操作性が向上しています。

64bitの「処理」に完全対応らしいです。(64bit環境で動作できることと、64bitの内部処理を行えるのは全く別ですよ!

 

試してみたところ、まず一番特徴的なのは2種類のコンプが同時に作動する仕組み
突っ込んでも破綻しない上品な加工をしてくれます。


英語マニュアルPDFはこちら。

http://www.tokyodawn.net/labs/Kotelnikov/Manual.pdf?645f4a

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バスコンプなので使い方は様々。浅く頭だけを潰しても良いですし、ドラスティックに突っ込んでも良いです。シングルバンドのコンプですが、低域の処理を丁寧に行う仕組みが内蔵されていて音楽的な配慮のある圧縮を行ってくれます。

上URL先にある画像や動画、プリセットを見た限りでは深く突っ込むスタイルを想定しているようです。

 

■重さと運用について

コンプとしてはとにかく重たいです。

トラック個別の下処理目的ではなく、複数の音をまとめた「バストラック、マスタートラック」での運用が前提となります。(Cubaseでの呼び方はグループトラックですね。)

 

コンプっていうと、とりあえず全部のトラックにつっこんで使うことが多いと考える人も多いようですが、これはあくまでもバスコンプ目的です。

トラック単体ではそれほど必要とされない高機能を備えているので、バストラックで使ってみてください。

 

もしバストラックを使ったことがないのでしたら、この機会に「トラックいくつかをまとめる」というミキサールーチングと、そのメリットについて勉強してみて欲しいです。

 

■バストラック主体のミックス手法

いきなり蛇足なTips話をすると、数十のトラックを全部精密に設定するミキシング方法だけではなく、割りと雑でも構わないので下処理だけしたらどんどんバスにつっこんで、バスごとのバランスだけでミックスを進める、というやり方があります。(ステムミックス、トップダウンミキシングと呼ばれている方法です。)要するに「ドラムセットは1つにまとめる」という方法を、「伴奏シンセをまとめる」「コーラスをまとめる」「ストリングスをまとめる」という方法です。

 

数十のトラックがあると、どんなに大きなディスプレイを使っていてもスクロールしなければならず、把握が難しくなりますし、目的のトラックを探すことに頭を持って行かれるので、音楽に集中できません。

個人によって能力の差はあったとしても、作業項目を減らせば必ず集中力を高めることができます。

8つくらいのバストラックだけを操作するという方針になります。

また、そのうちの1つを「プリ・マスター・バス」としておくと、単曲のマスタリングプロセスも扱いやすくなります。

このミックス方針についてはまた別途記事を書きます。多分。

 

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以下、 TDR Kotelnikov(コテルニコフ)の特徴的な機能の説明を、私が理解している範囲で書きます。

※一般的なコンプの説明は蛇足なので書きません。

※間違ったことを書いているかもしれません。ツッコミはコメント欄にお願いします。もしくはあなたのブログの記事ネタにどーぞ。

 

■多段コンプ

ピーク叩き用のコンプと平均化用のRMSコンプが一体化しています。

通常では複数のコンプ(リミッタ)で行う工程を1つのプラグイン上で制御できるのでスマートな作業ができます。

この2つの機能は内部的に連携しているようで、単に2つのコンプを立ち上げているのとは異なるニュアンスになります。

この連携によるスムーズなコンプ感が TDR Kotelnikov(コテルニコフ)の特長です。

 

■低域の緩和措置

コンプを強くかけた際に、低域が大きかった場合に問題が生じることがあります。

低音の大きさにスレッショルドが当たってしまうと、ポンピング(ダッキング)や歪みが顕著に出るため、楽曲に致命的なダメージを与えてしまいます。

これを緩和するために左側にある「LOW FREQ RELAX」が低域への線形スペクトル分布を根拠に反応度合いを軽減する仕組みになっているとのこと。

この機能は非常にすばらしいです。

低音楽器用に単発で使うメリットもあると言えます。

おそらく、マルチバンド処理だと思われます。

 

■ステレオ独立

まともなステレオコンプなら備わっている機能です。

というか「バスコンプの定義はステレオ機能の有無」とさえ定義づける人がいるくらいです。通常のコンプとバスコンプには実のところなにも違いは無く、「高性能で重たいからバス/マスターだけで使おう」という運用場所の差でしかありません。

Vo、Gt、Bsはモノラルなので不要ですが、Drumsをバスにまとまると当然ステレオになっているよね?という意味。そこで使うのが丁寧な処理のできる高性能なコンプ。つまりバスコンプです。

将来的にはコンピューターの性能がさらに向上し、Kotelnikov程度の負荷ならトラックすべてに使う、という時代になるのかもしれませんね。現にWaves L3-LLなどを「とりあえず挿しておこう」という使い方をする人さえ出てきています。そういう人にとってすでにL3-LLはバス/マスターエフェクトでは無く、トリートメント用になっているということです。実機エフェクタと違って、プラグインなら1つ買えば何個でも同時に使用できることも大きな違いです。場所も取りませんし。

 

が、一概にステレオ独立であることがベストとは限りません。左右であまりにも異なる処理をするとステレオ音量差が大きく違ってしまうので、サウンドが崩れる恐れがあります。

タムやサブシンバルの音によって右だけ強くコンプされているのに、左はコンプされないという状況になってしまうわけです。当然「L+R=中央」なので、左右バランスが大きく異なると中央定位が移動してしまうということです。これには十分に気をつけなければいけません。もし定位が崩れると感じたら、ステレオ処理をやめたほうが良いでしょう。


この問題に対処するため、左下の「STEREO SENSITIVITY」ではステレオで異なる出力になった時、どの程度のリンク処理を行うかを指定できます。デフォルトでは中庸な値になっています。極端なステレオ感を強調しないほうが良い仕上がりになります。

バスに入力されているソースの性質を良く考えて使いましょう。分からないならいじらない方が良いです。

 

■PEAK CREST

ピークコンプ部がRMSコンプ部に連携する度合いです。

もちろん、あまりにも突出してしまう音がある場合にはバス処理ではなく、個別トラックでちゃんとリミッティングしておくべきです。前段階の作業に戻りましょう。バスコンプは万能ではありません。

 

■RELEASE LED

左の青ランプがピークRMSが右の赤ランプです。
青ピークはチカチカと明滅するくらいが妥当だと思います。

RMSは全体の音と中央のGRメーターを見ながら常に程よく作動している程度が妥当です。がっつり潰したい時はご自由に。相当潰しても音の破綻が少ないのがこのコンプの特徴なので、思い切って使っていくのも悪くはないでしょう。

コンプの設定によっては、思い切り潰した時に最初の音が1発だけ大きくピークが出てしまうことがあります。それを叩き潰すのがスピード動作する側役目、ということです。これは本当に良くできた設計です。

 

よくあるミックス教科書ではそういうことが起きないように多段コンプすることを推奨していますが、Kotelnikovでは一気に処理できます。「シンプルな道具をちゃんと使えるようになるべき」という老害根性論は必要ありません。モダンで便利な道具を使い、さっさと作業を済ませるべき時代です。

 

■中央のメーター

GR、ゲインリダクションを表示します。

クリックすると音量表示になります。

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(V1.5.1修正)

メーター上でホイール操作で表示幅を変更できるようになりました。使いやすいです。

 

私が初心者の人にエフェクトの使い方全般について説明する時は「自分がかけすぎて音を壊してしまう傾向なのか、浅すぎて無意味な傾向なのかを知ることが大事ですよ」と説明しています。

このコンプはGRの表示幅が可変式なので、「こんなにGRのバーが動いているのはコンプしすぎだ!」と感じる人がいるはず。

でも表示幅は最小だと3dBなので常にバー半分程度のリダクションがかかっていても問題はありません

最大だと30dB以上になるので、バーが半分も下がるリダクションは明らかにおかしいでしょう。(扱う素材にもよりますが、普通に考えれば異常事態です。)

そういう意味ではちょっと難しさを感じるかもしれません。

 

とにかく「GRメーターの棒の大きさを見ない」「GRの『数字』を見ましょう」ということです。

正直な所、このバーは両方表示で良かったんじゃないかな?と思います。私は表示される情報量が多いほど良いと思うタイプなので。クリック回数によって「GRのみ、Gainのみ、両方」を選択できればGUIデザイン的には完璧だったはずです。

 

■GAIN CONTROL METER

中央の縦の青いメーターです。
”Gain Reduction dB”の文字の部分をクリックするとトグル表示です。
「FDRを反映しないゲインの合計量」とのこと。
FDRが何の意味なのかわかりません。目安にどうぞ。

 

■DRY MIX

ドライ音を素通りさせ、コンプ済みの音とミックスさせます。いわゆるニューヨークコンプ方式。鋭いピーク感と、コンプで潰した大きな音量感を両立できるコンプテクニックが1つのコンプ内で可能となります。

ちょっと潰しすぎかなーというコンプ部の設定+DRY MIXをちょっと混ぜると良い感じです。ちょっとと言っても3%とかではなく、10%刻みくらいで大まかに考えてOK。微調整という幻想は捨てましょう。

また、DRY MIXへのオートメは良い方策だと言えます。

 

■DELTA

圧縮された差だけをモニターする時に使います。

 

■EQUAL LOUDNESS BYPASS

ラウドネスプロセッサをバイパス、切断します。
挙動が重い時にどうぞ的な?

通常のバイパスと何が違うのかわかりません。

 

■PROCESS-QUALITY

品質を2種類から選べます。かなり重いコンプなのでノートPCで作業する時などは助かります。

Ecoにしておくと軽いです。重たい時にどうぞ。
レンダリング時はPreciseにしたほうが良さげ。

 

■右上の”?”ボタン(ヘルプ表示)

”?”を押してから、説明を見たい部分にカーソルを持って行くと英語の説明文がポップアップします。もう一度どこかでクリックすると通常モードに戻ります。

 

■ツマミ感度

ホイールとドラッグで異なる感度でツマミを操作できます。
操作の感度は右上の”⚙”(歯車マーク)で変更できます。
デフォルト状態ではホイールで大きく回転し、ドラッグで精密に回します。

 

もしデフォルトの加速ドラッグ操作に違和感があるなら、

歯車をクリック→Slider→Drag Modeを「Linear」にします。

こうするとマウスドラッグ感度が操作どおり素直に動きます。

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■難点

インプットゲインが無いのでちょっと不便。

せっかくモダン指向の設計なので、インアウトゲインを両方とも備えて欲しかったところです。

私が度々主張している通り、あらゆるプラグインはインアウトゲインが両方ついているだけで優秀です。

可能であれば無制限のインアウトゲインがあれば、それだけで極めて使いやすいプラグインになります。

特にコンプレッサーは「入力された音量」に対して加工を行うため、コンプそのものの機能よりも入ってくる音量を調節できるだけで一気に使いやすいコンプになるからです。


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DAWNは「夜明け」の意味です。ドーン。
ダウンじゃないです。

Kotelnikovは人名。ロシア人エンジニア、ロシア科学大学教授のウラジミール・コテルニコフ(2005没)。

 

メーカー名が「Tokyo Dawn Records」ですが、東京にあるわけではありません。ドイツ、ミュンヘンにある企業です。たまに「国産プラグイン」と言っている人がいますが違います。「東京ディズニーランド」とか「オランダ村」「台湾ラーメン」みたいなものです。

 

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間違った内容を書いているかもしれません。

ツッコミはコメント欄によろしくお願いします。

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