eki_docomokiraiの音楽制作ブログ

作編曲家のえきです。DTM/音楽制作で役立つTIPSを書いています。

テヌートとスタッカートの扱い

音楽、楽譜と演奏についての記事です。

テヌートやスタッカートの扱い方にはいろいろな解釈があるのでよく考えましょうというお話。

Facebookでの話題でこんな記譜が出てきて悩むよね、というお話がありました。

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ディミヌエンドは「音を小さくしていく、減衰」。テヌートは「音を保つ」。スタッカートは「音を短く(※)」と理解する人が多いです。

しかし、スタッカートの扱いは記譜の歴史と慣習によって大きな変化が起きていますから、スタッカートについて詳しく知っておく必要があります。

 

 

テヌートの意味

テヌート音価の長さいっぱいに音を「伸ばす」「音量を維持する」。

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ディミヌエンドは「音量を下げていく」。

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この2つに誤解の生じる余地はありません。

 

 

■スタッカートの解釈は複数ある!

問題はスタッカート。

私が知る限り、実際の演奏では4種類の方法で扱われています。

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正しい、というかスタッカート本来の意味は(2)です!

 

■1,短縮スタッカート

「音の長さを半分にする」という解釈について。

 

これは義務教育の音楽の教科書などで紹介されていますが、「伝言ゲーム」な意味の変質による誤解です!

この解釈は割りと現代的な解釈であることを知っておいてください!

古典では全音符や2分音符にスタッカートがつくことがあるからです!

 

特にテンポの速い曲では事実上「半分」という演奏で妥当な結果になることと、テンポの速い曲の中での表現で明確な違いが出ることもあり、スタッカートの意味がどんどん誤解されていきました。

 

■2,切断スタッカート

これがスタッカート本来の意味です。

 

「次の音と明確に切り離す」という解釈で演奏されます。

「ラーーーラーーー」ではなく、「ラーーン ラーーン」と演奏します。

 

この表現は古典で頻出し、遅いテンポの曲の全音符や二分音符にスタッカートがつくことがあります。

 

■3,減衰スタッカート

現代的な拡大解釈です。本来のスタッカートの意味とは大きく異なります。

 

スタッカートはあくまでも音の長さを変更する記号なので、音量の経時変化ではありません。

 

 

 

 

■4,短縮+減衰スタッカート

これも拡大解釈です。本来のスタッカートの意味とはかけ離れています。

 

しかし、事実としてスタッカートを「減衰して、ポーーンと跳ねるように」「ピアノや弦楽器のピチカートのように」と教えている学校やプロ音楽家、プロ指揮者がいます。

よりよい演奏表現のために「ポーーン」という音量変化を取り入れたわけです。

オーケストラの弦楽器や、アコースティックギター、ピアノの曲を吹奏楽などに編曲した場合に音量を減衰させる表現が必要になります。それを表現するためにアレンジャーがスタッカートを記譜してみようと試みたのかもしれません。

 

そういう場合はスタッカートではなく、alla pizz.(ピチカートのように)とかalla piano(ピアノっぽく)、alla chitarra(ギターっぽく)と書くべきだと思います。

 

若い頃に誤った記譜表現を刷り込まれると、大人になっても「テヌート+スタッカート+ディミヌエンド」で悩むことになります。

 

テヌート+スタッカート

テヌートスタッカートは頻出する付加記号です。

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テヌートは「維持」であることに異論は無いはずです。

問題はスタッカートを「切断」と読むか、「減衰」と読むか。

 

もしスタッカートを減衰と読んでしまうと、下のような状況で問題が生じます!

 

テヌート+スタッカート+ディミヌエンドは?

 

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テヌートディミヌエンドは悩む余地がありません。「長さを維持し、音量を減衰する」ですね。

 

これにsta.をつけるのですから、sta.の意味を「減衰」と解釈するとdim.と重複してしまいます。意味が無くなってしまいますね。

 

だからこの場合は、

 

という3つの組み合わせが正解です。

 

モダンなスタッカートの読み方(減衰)だけを覚えていると、こういう複合付加記号を見た時に疑問が生じることになります。

 

なお、「アクセント+テヌート+スタッカート」もほぼ同じ演奏になると言えます。

アクセントは音量変化の記号だからです。

アクセントの場合は音のスタート付近を強調するので、減衰のタイミングが異なると考えてください。

 

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■記譜と表現

スタッカートは1つの曲の中で同じ扱いになるとは限りません。場面によって扱い方が異なるのは当然です。曲によっても異なりますし、テンポや曲想によっても異なります。さらには音楽的な役割によっても異なります。

だからと言って、毎回適当な演奏をやって「音楽は自由だ」と言うのはおかしいです。

なぜその場面、その音で、そのような表現を行うのか、根拠を持って説明できるようにするべきです。

 

楽曲解釈の他、それぞれの楽器の演奏上の制約、慣習があるので、それぞれの理由をうまく組み合わせて、最終的には「良い音楽」となるように組み立てるのがベストです。

 

対立する幾つかの理由をうまく組み合わせましょう。

 

たとえば、アレンジ曲の場合、元がピアノ曲テヌートが書かれていたとします。それをクラリネット・アンサンブルに編曲したとしましょう。

原曲のテヌートをそのまま記譜してしまうと、音が減衰してしまうピアノのために書かれたテヌートの意味と、音が減衰しないクラリネットテヌートは出てくる音がまったく異なります!

編曲する人も、演奏する人も、この問題については常に考えてください。

 

特にオーケストラ曲を吹奏楽用に編曲した場合、弦楽器用の記譜が管楽器で演奏されることになるので、強い注意が必要です!

 

■記譜は標準的に、演奏は自由に。ただし根拠を持って。

なお、過去に吹奏楽の曲で最低最悪な付加記号の解釈を与えた楽曲がありました。

曲名は失念しています。

その曲の解説では「スタッカートは長くならないようにという意味です」「テヌートは短くならないようにという意味です」と書かれていました。

完全な誤りです。もしそのような記述が許されるなら「fは小さく演奏しない」「pは大きく演奏しない」になってしまいますし、「Vivaceは遅くないテンポで」となってしまいます。ありえない表記です!

この曲はアマチュアが書いた適当なアレンジ曲などではありません。日本の吹奏楽団のほとんどが参加するコンクールの課題曲です。多くの楽団が一生懸命に練習する曲の中でこのような独自の記譜ルールを使ってしまうと、若い奏者が誤った解釈を刷り込まれてしまうことになります。

コンクール課題曲は公募なので、曲の良し悪しによって採用されたのでしょう。しかし、実際に配布される前に校閲をし、適切な音楽用語で記述するように修正してほしいものです。

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