eki_docomokiraiの音楽制作ブログ

作編曲家のえきです。DTM/音楽制作で役立つTIPSを書いています。

(編集中)音楽を作る時に考えるべき、音楽理論以外のこと

音楽制作の際に心がけることについての考察についての記事です。

とりとめのない内容なので雑記カテゴリーかなぁ。

(2017年7月24日編集済み、編集中)

音楽を作る時に必要になるスキルは様々ですが、近年私が強い興味を持っているのは「心構え」です。

心構えと言っても「いい曲を作ろう!」とか「手抜きをしない!」というものではなく、「この作業の時にはこういう心構えで挑もう!」という精神状態の切り替えのことです。

 

 

音楽制作で必要になる具体的なスキルは、

  • 作編曲のテクニック
  • ツール操作のテクニック

という2つの大きなテクニックがあり、それぞれ更に細分化できます。

作編曲のテクニックをもう少し細かく分けると、楽典、楽器個別の知識、編成とジャンルの知識、コード・スケール、クラシック系書法、流行のサウンド、という要素があります。更に細かくすることもできますが割愛。

ツール操作のテクニックを細分化すると、DAWの操作、コンピュータの操作、音楽機材の操作、モニター、ミックス・マスタリング、という要素があります。こちらも更に細かく細分化することができますが割愛。

徹底的に細分化して書き出してみたことがあるのですが、100項目くらいになってしまいます。(これをやってみると意外と良いおさらいになるのでオススメです。)

で、そうしたカテゴリそれぞれの作業において「この作業工程の時にはこういう意識に切り替えるべき」というものがあります。

意識の切り替えを誤ると、時間がかかるだけでろくでもない結果になってしまうよね、ということです。

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■閉じるべき意識

例えば、MIXにおけるEQの練習について書かれているこの記事では、LDFCメソッド(Listen、Diagnose、Fix、Compareの頭文字)を紹介する中で、

www.sonicscoop.com

 

Use only your gut impulse and don't turn on the analytical part of your brain.

 意図的に「分析しようと考えずに素早くやってみなさい」と教えています。

 

(追記:上のリンク先記事の翻訳・要約の許可をもらえました!

より良いイコライザーの使い方『LDFCメソッド』(Sonic Scoop翻訳記事) - eki_docomokiraiのブログ

 

丁寧にやろうとせず、理知的にならず、聞こえるままにやってみることで得られる結果があります。その結果を分析し、診断する、というのがリンク先記事で紹介されているLDFCメソッドです。

同様の心を必須とするものとして心理テストが挙げられるでしょう。「深く考えずに回答してください」っていうアレです。

 

普段の生活や会社の仕事、学校での勉強でも、外部からのストレスでイライラしたり、プライベート時間のことでソワソワしたりせず、「今はとにかくこれをやる!」と決めたほうが良いことってありませんか?

 

意図的に考えることをせずやってみるほうが良いことがあります。

逆に、精密無比に、病的なまでに神経質になって取り組まなけれいけない行為があります。

瞬間的な直感が優位に働く作業と、長期的な分析判断のほうが良い結果になりやすい仕事があります。

 

音楽を作るために必要な様々な工程のそれぞれにおいて、どういう意識を使い、どういう意識を封じるか?それはとても大切なことだと思うんですよ。

それができないと、自分が持っている能力を発揮できないんじゃないかなーと。

 

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■脱線、ミクロとマクロと、

雑学程度にしか知らない分野のことを引用するのもちょっと気が引けるのですが、量子力学の話を少しだけ書きます。

量子力学によって世に知らしめられた概念として「ミクロ領域と、マクロ領域では異なる理屈が働いている」というものがあります。

音楽制作の作業でも虫眼鏡や顕微鏡で覗き込むような作業と、全体を見て最善手を打つ作業があります。さらに言えば、その根拠が今作っている曲ではなく、時代の流行や、過去からの潮流を見つめ直すことで、ようやく見つかる方向性というものもあります。

 

すでに作り始めている曲に取り組んでいる最中に「今の音楽シーンはー」なんて話題を持ってこられても「あ、ごめん。今この曲完成させないといけないから後でね」としか言えません。また、同時進行で作ったとしてもせいぜい数十曲にしかタッチできません。評論やりたい人は勝手にやっててよ、俺は作る側だから知らんよ、としか思いません。

想像力は無限かもしれませんが、体はひとつしか無いので仕方がありません。

 

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■音楽制作における単純接触効果

「単純接触効果」とは認知心理学社会心理学)の用語です。

何度も見聞きしていると「なかなか良いんじゃね?」という気持ちになってしまう心理作用のことです。

音楽制作は1つの曲の同じ部分を何度も加工する反復的な作業ですから、単純接触効果が強く働いてしまいます。客観的になって「変なものは変」と判断できるように、適切なリフレッシュが必要です。

多くの人は自分が今作っている曲のどこが変なのかを感じ取ることはできません。

 

 

意識的に「単純接触効果」を打ち消すように行動するべきです。

風呂に入ったり散歩や買い物に行って強制的にリフレッシュすることで、「変」だと感じることが可能になります。

変だと感じた箇所を修正してみれば「良くなる」か「更に変になる」のどちらかの変化を得られます。二択で変化をつかめるのですから、極めて効率的です。

 

問題は「変」だと感じ取れないことです。

思うにその原因は単純接触効果によるもので、一生懸命に触って作り込んできた曲だから変えたくないという心理が働いてしまうのではないかと考えています。変えれば良いのに変えられないんです。

 

ところで、アニメ談義などで「最後まで見てから文句言えよ」と言う人がいます。しかしこれは「単純接触効果が起きてから語れよ」ということですから、言い換えれば「拒絶反応が無くなるまで待ってから文句を言え」という矛盾ですね。

 

また、ちょっと単純接触効果とはズレた心理作用ですが、「自分のお金で買ったものだから、これは良いものだ!」というものがあります。

 

そういう精神的なバイアスを取り除くための具体的な行動をするべきだと感じています。

 

■馴化と脱馴化

馴化は「じゅんか」と読みます。ならす、なれる、という意味です。

「美人は3日で飽きるけど、ブスでも3日で慣れる」という言い回しの「3日で飽きる」のが馴化。慣れてしまって当たり前になった状態のこと。「3日で慣れる」のも同じく馴化です。

脱馴化というのは、対象Aに慣れてしまった後(馴化の後)で、異なる刺激Bを受けると、再び対象Aに対して新鮮な気持ちになる作用のことです。

 

音楽は同じリズムやフレーズが反復するものです。

異なる音が聞こえてくると「おっ!」と感じ、

また以前の場面に戻ると「おっ!」となります。

 

最初に聞いた時とは別の印象になる工夫が必要です。

あまりにも変化が多すぎると馴化が生じないので、「ちょっとついて行けないわー」となってしまいます。

 

過去に私が自覚したのは、作曲している時でした。繰り返しが不要だと思ってどんどん展開を速くした場所がありました。しかし、冷静になって客観的にチェックしてみると展開が速すぎると感じたので、反復することにしました。

 

最近レッスンで受講者が持ってきた曲がまさにそれでした。展開が多すぎて突飛な印象ばかりが目立ってしまっていました。

 

・極度の馴化を強いる音楽 

特殊なジャンルのテクノ等は徹底的に反復します。徹底的な反復で強い馴化を引き起こさせることを狙っているジャンルなのですが、あなたが今作っている曲はどっち?私はそういう音楽に対する興味はありません。知人の薦めでそれなりに聞き、解説もしてもらいました。その解説で教えてもらったのが「徹底した反復によって生じる面白さ」という概念でした。音楽評論用語で言えば「トランス感」です。しかし、私はその感覚に至る前に強い拒絶感が生じてしまったわけです。

 

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「どんな音楽でも聞かなきゃダメだよ」と言われています。

私は聞くことは聞いた上でいくつかのジャンルを拒絶しています。

 

なお、私の長所というか特性として、食わず嫌いがありません。どんな食べ物でもとりあえず食べてみて、「さぁ、どんな味かな?」と確かめることにしています。親が食品関係の仕事だったこともあり、幼いころの我が家には世界中の摩訶不思議な食材が出てきていたことが原因だと思います。

それが未知のものに対するファーストコンタクトの取り方で、音楽においてもそれは同じです。学生時代には兄弟でシンセに親しみテクノを作り、友人の薦めでメタルを聞き、学校ではバッハを練習し、帰りにはカラオケで流行の歌を歌っていました。楽器は10種ほどたしなみ、そのうちの幾つかではコンクールで賞を取っています。何を言いたいのかというと、浅く広くやることと、狭く深くやることを両立してきて、それでもなお拒絶を示すことはあるということです。

単に激辛食品が苦手だとか、そういう体質は誰にでもあるものです。

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私は以前はこの「馴化」の作用について誤解していました。

慣れる能力は環境に適応することによって進化してきた(あるいは逃げ回ることで生き延びてきた)ヒト特有の本能的な能力、適応力の発揮だと誤解していました。

心理学系の情報をちゃんと調べてみると、多くの動物にも起きる作用なのだそうです。

 

心理学については雑学と大学の一般教養レベルの程度の知識しかないのでお手柔らかに。

 

 

■疲れている時でもできる作業は何?

リフレッシュは大事ですが、作業工程ごとに毎回リフレッシュをしていると、1曲作るだけで100回のリフレッシュが必要になってしまいます。それじゃあいくら時間があってもできあがりません。

音楽制作で必要になる作業工程の流れを明確に決めておいて、「この作業工程で必ずやることはコレ!」「この工程でやらなくて良い加工はコレ!」「この作業に着手するのはあの作業が全て終わった後!」と決めておくことをおすすめします。

場当たり的に気がついた点や思いついた点を実装していく方法だと、最終的な仕上がりに持っていくまで無駄な時間ができてしまいます。

 

非常にクリエイティブな活力がある時は白紙からの作曲をするべきです。

疲れている時には発想力が落ちているので和声衝突チェックやミックスの帯域チェック、アーティキュレーション処理など、機械的に処理できる作業をやるべきです。

音楽的な要素が全く無い作業をするのもおすすめです。書類制作、メール応対、todo管理、ウェブ巡回などを「製作中の音を聞かずに」やると、良いリフレッシュにもなるので一石二鳥です。

 

■物珍しい情報ばかり知りたがる

鎌倉時代吉田兼好は『徒然草』の第116段で、

「何事も、珍らしき事を求め、異説を好むは、浅才の人の必ずある事なりとぞ。」

と述べています。

「物珍しいものばかり求めるのはド素人」ということです。

 

音楽理論の学習において心がけるべきです。

「リディアンクロマチック理論」や「下方倍音列」、「コントラバスフルート」とか「循環呼吸」という、通常の音楽で必要とされることがまず無い「珍しい単語」を知るのは音楽の勉強ではありません。それは雑学です。

普通のものを普通に扱えるようになるだけでも相当な年数がかかるのが音楽です。

どうでも良い雑学レベルの情報、クイズ用やマウンティング用(後述)のための知識を身につけるくらいなら、この記事で紹介しているような心理学の知識でも強化した方が良いんじゃないでしょうか。そんな非音楽的な知識を身につけるくらいなら、どれかの楽器の運指を部分的にでも暗記することに挑戦したほうが役に立ちますよ。

 

■マウンティングへの対処

近年流行している言葉に「マウンティング」というものがあります。

「お前より俺の方が優れている!」と思い知らせるためにするあらゆる行動です。

音楽界隈で多いのが、上に挙げたような珍妙な音楽理論の話を「単語で」持ってきて知識自慢をしたり、今話題にしているのと全然関係ない音楽の話を持ってきたりするケースです。ネットで音楽談義をしていると非常に多いですね、こういう人たち。

まぁ、そういう人は適当に無視すれば良いだけなのですが、決して対抗しようとしてはいけません。対抗しようとすると、さらにレアな知識を仕入れることが音楽能力を高める行為だと勘違いしてしまうからです。

彼らと同じ土俵に乗って競ってはいけません。あくまでも雑談として接する程度で良いです。

 

コンコルド効果

修正作業で大事な考え方です。

コンコルド効果」とは、それまでの投資が無駄になることを恐れて中断できなくなる心理作用です。パチスロに突っ込みまくったので「あと1万円入れれば絶対出る!」という考えに囚われてしまう状態です。

音楽制作では「この部分は一生懸命作ったから消したくない!」と思い込んでしまっていて、微調整だけでどうにか改善しようと執着してしまう状態です。

消してやり直したほうが良いんじゃないかな?

 

たとえ消したとしても記憶には残っていますし、コンコルド効果に陥らずに、深層心理にあった「実はここ、直したほうが良いと思ってたんだよ……」という気持ちを表層化させるきっかけになります。断捨離しましょう。

 

■徹夜するとクソ曲

音楽制作をやっている人なら誰もが必ず経験する現象に「徹夜して頑張ったのに、寝て起きて聞いたらクソ曲だった!」という超常現象があります。

これは様々な心理作用がー、というより、単純に疲れです。満腹の時に食べたらどんなごちそうでも美味しくないのと同じです。

 

私の場合はある程度まで曲ができた時点で、リフレッシュ直後にひたすらダメ出しをメモし、メモに従って淡々と修正作業をすることにしています。

リフレッシュ直後に聞いた時の印象こそが全てだと私は信じています。

もちろん徹夜で長時間作業しなければいけない時はあるのですが、リフレッシュしないとできない種類の調整があることだけは忘れてはいけませんね。

 

スポーツマンはこういうことに詳しいです。

筋トレのやりすぎは逆効果になるのは現代では常識です。食事や休憩のタイミングまできっちり管理するのが優れたスポーツマンです。

 

 

■ダニング・クルーガー効果

未熟な人ほど自分を高く評価したがる心理作用です。

営業活動では「できます!」と大きく言った方が良い場面もありますが、それはあくまでも大きく見せた方が良い状況だけです。

基本的に「まだまだ頑張らなきゃ」「あいつに負けてるよな」と意識し、努力するための燃料とするべきだと思います。

 

つーか、音楽において「なんでもできます」なんてありえないですよ。得意不得意は必ずあるので。

過去に会った人で「どんなジャンルでも作れる」と言っていた偉そうなクラシック系の人がいたので『EDM作れます?』と意地悪な質問で追い込んだら、「EDMって何?」と聞き返されました。Youtubeで聞かせたら「このくらいなら耳コピならできる」とのこと。おいおい、この席は仕事レベルの話をしてたんじゃなかったのか?ということがありました。誰も耳コピの話なんかしてねーよ。

 

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■異なる分野を学習する

バンド系の人はコードに強いですが、高度なコード知識まで到達できていない人が多いです。クラシック和声の知識を少し仕入れれば、意味不明なコードがどう成立したものなのか理解しやすいかもしれません。

逆にクラシック系の人は和声の知識でゴリ押ししようとしすぎるので、初歩のコード運用知識を学ぶのが良いと思います。

どちらも徹底的に突き詰めればほぼ同じことができるようになります。私はこれを「地球をどっち回りで一周するかの差」と呼んでいます。

 

ヨーロッパを中心にした世界史・世界地図では日本は東の果ての国であり、アメリカは西の新大陸です。しかし、日本の隣の国は中国や韓国、そしてアメリカです。ヨーロッパ中心の地図ではアメリカと日本は最も離れた位置にあるのに、日本の国交としてはアメリカはとても身近な国ですね。

これと似たように、クラシックの和声理論が進化し続けた果てに、美味しいところを簡略化したのがジャズ・ポピュラーで使われるコード理論です。

おいしい部分だけを抜き出したコード理論では、和声理論の初歩で表現できる要素が完全に欠落しています。

やったことの無い方の理論を少し勉強してみれば、両方の便利な部分を習得できるということです。可能であれば両方できる人からマンツーマンレッスンで教わるのが良いです。私は両方それなりのレベルでできるので希望者は連絡してください。あなたの水準に合わせて美味しい部分だけレッスンします。(宣伝。)

 

■音楽家は心理学を学ぼう!

この手の心理学の話はマーケティング、営業・接客、育児、学校教育、詐欺などの書籍で知ることができます。また、Wikipediaのカテゴリ「認知バイアス」なども面白いです。もし興味があったら調べてみてください。

これらの分野のノウハウを知れば、「あー、これも心の作用なのか」と割り切って考えることができるようになります。

音楽を作っている時に「ある心理状態」に陥っていることが自覚できればリフレッシュするタイミングだと判断できるようになります。

 

■音楽家はスポーツ理論も学ぼう!

また、スポーツ・トレーニング系の書籍もオススメです。

スポーツという分野は、自分を強化する方法が非常に具体的に研究されています

音楽以外の分野から役立つ情報を仕入れていくことをおすすめしたいです。

 

スポーツというのは肉体の動きですから、目で見てチェックしやすいです。

目に見えることをトレーニングするので、上達する際に必要なノウハウが良く研究されています。

もちろんスポーツでも目に見えないメンタルなトレーニングもありますが、メンタル作用の結果は結局、目に見える形で現れるので、「そういう失敗をする場合はこうする!」というノウハウに到達しているのがスポーツの分野です。

 

筋トレでは、「軽い負荷で回数を多く」と「限界マックスで数回だけ」を使い分ける方法があるのは、もはや一般常識レベルで知られています。あと、いきなり強い負荷を与えても意味がないから、今の自分に合わせて着実に力をつけていくべきとかとか。

100キロのバーベルをいきなり挙げるのは無理だから、今の自分の力で50回連続でできる重さと、1日のうちでベストな状態の時に数回しかできないマックスをやるべき、ということです。いずれの回数も根拠は「今の自分」です。

 

それなのに音楽系の人は「プロは1曲数時間で作る」とかいう今の自分に必要ない知識ばかり仕入れているように感じます。最初から数時間で作れるわけ無いじゃん!

自分が不慣れであることを自覚し、何を強化するべきかを知るべきです。そして、様々な技術を分類し、どの能力を強化するのかを明確にしましょう。適当にオモシロ情報を仕入れるのでははなく、今の自分にマッチしたスキルを1つずつ着実に仕入れ、実際に使ってみてレベルアップしていく。これがトレーニングです。

制作の実務においては、時間を管理し、作業工程の順序を明確にし、スポーツマンが試合のために身体を作り上げるように自己管理をする。

 

音楽は理系でも文系でもなく、理系と文系と、そして体育会系の中間にあるものだと私は思います。

 

 

© docomokirai 2017 楽曲制作、ミックス、マスタリング。DTMと音楽理論のレッスン。