eki_docomokiraiの音楽制作ブログ

作編曲家のえきです。DTM/音楽制作で役立つTIPSを書いています。

DTM、音程補正の正しいやり方

DTMに関する記事です。昨夜の談義で「音程補正ツールの正しい使い方について書かれている記事って全然無いよね」という声があったので、端的に書いておきます。

(2022年1月8日更新)

この記事ではVariAudioを使っていますが、同様のことはAutoTuneでもMelodyneでもできます。

「一括操作の音程補正だとガチガチ感が出てしまう」とか、そういう作り方をされている雑な仕事の音を聞いて「補正してる音はすぐ分かる」とか言っている人がいますが、以下のやり方をした音を聞いても補正していることは絶対に判別できません。判別可能なのは下手くそがやった雑な音程補正だけです。

 

■これは何の話か?

そこそこ以上うまい歌をわずかに補正する時の技術です。

 

■何の話ではないか?

「音痴の修正」ではありません。←そこそこ直してからこの記事の方法を試してみてください。

「歌ってみた」等の大幅な補正作業を見たことがありますが、1音以上ずれている音を編集する作業を終えてからこの記事を参照してください。

 

=ハモリを作る時の加工の話ではありません。

■Autotuneに対する誤解

いわゆる「オートチューンの音」というのは、補正ではなく加工です。

いかにも機械的に加工されたサウンドを作る手法です。

一方、ボーカル補正というのは生声の良い部分を残しつつ、明らかなミスを修正していく編集のことです。

この2つをごっちゃにしている人が割と多いので認識を改めて欲しいです。

また、「ロボット声=コンピューターによるボーカル補正」としか認識していない人が「ボーカル補正はダメになる」と勘違いしています。2つはまったく異なる編集作業です。写真をレタッチする作業と、漫画にする作業くらいの差があります。

 

あなたが今やる作業は「ロボット声」を作るエフェクティブな加工ですか?

それとも演者のスキル不足を補うための「修正」ですか?

 

ロボット声も大きく分けて2種類あり、ピッチ強制エフェクタを特定の設定にして一発通しするだけのものと、より強い機械感を出すために作為的に音程を折り曲げていくスタイルがあります。後者は俗に「ケロケロボイス」と呼ばれています。

 

■手順

まず「頭」「終わり」の音程移動ニュアンス部分を残してセグメントを切ります。

セグメントは適当に数か所で切ると良いです。

この作業は音を一切聞かなくても8割以上できるので、別の音聴き作業と並行することができます。

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セグメントを切ったら胴体部分の音程を半自動で合わせます。微調整は不要です。

ドラッグした時に音程ピッタリの近くになると吸着されるので、それに従ってピッタリ移動させます。

胴体部分の音程揺れは胴体部分のセグメント内に残っているので、エディタの表示上で赤いバーはバキバキに修正されていますし、操作も非常に雑にやっているのですが、下手くそなオートチューンのような作為的な感じは一切出ません。

これをやらないと「Autotune設定一発通しのオートチューン感」が出すぎてしまいます。一昔前のメジャーリリースものでも、明らかにミスっていて「あ、これ編集したな」と見破られてしまうものも多かったです。

ボーカル編集のコツは「いかに加工するか?」ではなく「何を残すか?」です

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■例2

次も同じです。

頭、胴、尻に分割し、必要に応じてピッチ編集します。

f:id:eki_docomokirai:20170504064214p:plainVariAudioの場合は選択したバーすべてが吸着対象になるので、まとめて選択してちょっとドラッグすると一発ですべて吸着されます。

Melodyneの場合、ダブルクリックで吸着です。

 

ぶっちゃけ「セグメント切り」の下準備さえしておけば、あとは自動吸着で平均律に合わせてしまってもほぼ問題のない仕上がりになります。

セグメントそのままの状態で音程を微調整し続けるより、圧倒的に速く「まぁまぁ良いんじゃね?」状態に持ち込めます。とにかく下準備が大事です。それをやらない人は微調整に夢を見続けることになり、時間を失い続けます。作業時間とクオリティは無関係です。

 

それ以上の音楽的な加工はかなりの音楽経験が必須になります。

 

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■なんでセグメントを切るの?

セグメントを切らないと検出された音程バー全体が移動します。伸ばした音の最初の部分に音程を補正すると終わりの部分で崩れます。中間部分で合わせると頭と終わりがずれます。終りの部分に合わせると頭がずれます。

それを避けるために「残す部分」「音程感を明示する部分」に切り分けるということです。

音程補正ツールは伸びている音を1本のバーとして表示するために「平均音程」でおおざっぱな位置に初期配置されているからです。ツールは楽譜上でどのような音が正しいのかを判断しているわけではなく、周波数を機械的に検出しているだけです。

セグメントを切断すると、切断されたパーツごとの平均値に再配置されるので大きくズレている部分と、かなり正確になる部分とに別れます。上画像の右側の赤いノートの頭の部分がどのように処理されているかを観察してみてください。切断後に頭と2つ目のバーが大きな段差になっています。これは頭のバーのシャクリの部分の音程が再検出された結果です。

 

胴体部分のセグメントを複数に切るのも理由は同じです。伸ばしている部分の前半・後半のどちらかにあわせてもどうせズレるので、2つか3つに切断した方が良いということです。

■なんで頭と終わりを残すの?

いわゆる「しゃくり」など、音程が大きく動いたり、音程があいまいなノイズとして検出される部分は音程を変えると激しく破壊されます。そこの破壊が起きるといかにも音程補正ツールを使ったおかしな音になります。なので残したほうがベターです。

■じゃあどんどん細切れにした方が良いの?

違います。細切れにしすぎると音楽的に必要なある程度のゆらぎまで消えてしまいます。表示されている音程の曲線を観察しつつ適当に数か所で切る程度で良いです。

■裏技

めちゃくちゃに細切れにするか、数カ所に切ってからの加工でも構わないので、胴体部分の音程をまっすぐに加工してしまいます。

強制的に真っ直ぐにした部分をエフェクトのビブラートで適度に揺らすと、とてつもなく美しいビブラートを付け加えることができます。ビブラートエフェクトのかかり具合はオートメーションで傾斜させると自然な仕上がりになります。ビブラートの速さは5/sec~6/sec程度が一般的です。Depthはエフェクトによって指数が異なるので、これ以上深くなったらおかしくなる数値を見つけ、それを最上限としてオートメーション情報を修正すればすぐに完成します。「強いビブラート」「弱いビブラート」でそれぞれどの数値を使うかを決定しておくと、一貫性のある歌唱シミュレートができます。統一感のないパラメタだと不安定に聞こえてしまいます。

■音程補正全般の話

メロダインじゃないとダメだとか言ってる人がいますが、それは超音痴な歌への対処や、強制ハモ制作で便利なだけです。動かす音程幅が大きい時にはメロダインは素晴らしいです。

Cubase付属のVariaudioがダメだと言っている人がいますが、まったく問題ないです。むしろシームレスに作業できるメリットの方が大きいです。

 

なお、廉価版のメロダインを名前だけで使うのは本当に愚かなことです。ブランド名を所有したいのか、良い道具を使いたいのか考えるべきです。私はCubase付属のVariaudioで全く問題なく仕事ができています。

 

■レッスンの案内

以上、過去にレッスンで教えていた内容から抜粋でした。

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もう音程補正技術を教える需要も無くなってきたので無料記事として公開しておきます。

 

 

有料レッスンでは他にもいろいろなボーカル編集テクニックについて解説しています。そういう技術は頻繁にボーカル編集をやる人にとって、驚異的な時間短縮、時給アップに直結します。作業にかけた時間とクオリティには何の関連性もありません。最短時間でザクザク仕上げていくべきです。

 

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現在のレッスン対応については下の記事を随時更新しています。

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