eki_docomokiraiの音楽制作ブログ

作編曲家のえきです。DTM/音楽制作で役立つTIPSを書いています。

Toneboosters FLX v3という神プラグイン

(人気記事です!)Toneboostersというプラグインデベロッパー。聞きなれない名前かもしれませんが、性能は抜群に良いプラグインを作っているメーカーです。超安くて、超高性能です。中でも特に素晴らしいのがFLXというダイナミックEQです。

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(2020年10月29日更新)

 

 

■(更新)Toneboostersの単品は無くなりました

2017年11月13日更新。追記。

ToneBoosters | Audio Plug-ins | Plug-Ins

FLX単品は無くなりました。

2017年11月13日現在では、「BusTools v3」という40ユーロのバンドルに入っています。FLXのためだけに買っても良いと断言できます。 

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以下、過去記事。ちょっと修正した。

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■Tone Boostersって?なにそれ?食えんの?

ToneBoosters | Audio Plugins価格一覧一括マニュアルpdf(英語)

 

■セール割引

セール安売りが皆無ということはつまり「ブラックマンデーでTB買っちゃったー!超良いわー!」と叫んで回る人たちが話題にしないのでマイナーな印象があります。
むしろここ1年で割安バンドルが廃止の上、単品でも値上がりしてしまっています。
が、それでも安い。安すぎる。

■一番気に入ったのは?「値段だ。」

今存在するTBの製品はどれも一律€15~€30という狂った価格です。

「買った喜びを叫んで回る」の別件。
プロ御用達と言われて久しいMcDSPやWaves、Oxfordなどのプロ向けエフェクト群。
付属・フリーから始め、情報収集をしていると書籍やサイトではこれらを使っている人の声が大きいので「いつかはWaves」という気持ちになる人は多いようです。中には何も考えず「とりあえずWaves」という人さえいるようです。そういう人がついに念願のWavesを購入すると声が大きくなるのも納得ですし、Wavesの中にも格付けがあって「いつかはMercury」というヒエラルキーに支配されていきます。売り方としては非常に上手いなぁと。

とは言え、上に挙げたWavesやOxfordというブランドが確立したのは「それらが出た時代のプロが使い慣れているから」「それらを使っている人に任せれば安心だから」などの理由による部分も大きいです。
後発品は先発品を前提に設計されています。ですから必ずしも書籍で紹介されているものと同じ道具でなくても大丈夫です。

TBにはかつて作業工程に合わせた効果的な組み合わせて「トラック下準備用」「ミックス用」「バストラック用」「マスタリング用」のバンドル商品があったのですが、ここ半年でリニューアルされた際に消えています。

不要なものを抱き合わせで買わずに済むと好意的に解釈し、バラで欲しいものだけ買いましょう。今回紹介するTone Boosters-FLXの他ではBarricade(シングル/マルチバンドリミッター+ディザー)が非常に好評化のようです。今からWaves-L1を単品で買うくらいならTB-Barricadeの方が良いと思います。

「見た目の地味さが致命的」と言っていた人もいますが、私はTBのデザインは好きです。独自性よりも常識に依った機能美を高く評価しています。カラーデザインの観点からも非常に優れていると感じます。

 

■ダウンロード

ToneBoosters(公式サイト内、TB-FLXの個別ページ)
体験版(一括全部入り)

VSTAU、32/64bit
体験版はToneBoostersのすべてのプラグインがインストールされます。
一部は完全フリーです。(が、あまり汎用性の無いエフェクトのみです。)

 

■体験版の機能制限

体験版は設定保存ができません

エフェクトパラメタを設定したDAWの「プロジェクトを開き直すと」設定が消えて初期状態になっているはずです。この点だけは注意してください。パラメタがロックされているのではなく、一度閉じるとすべてが初期化されてしまいます。

「じゃあオートメ書いておけば良いんじゃね?俺って天才じゃね?」と思ってパラメタへのオートメを書いて試してみましたが、ダメでした。オートメーションも完全に外されてしまう仕組みのようです。もしかしたら他のDAWではできるかもしれません。暇人は試してみてください。

DAW側でのプリセット保存も不可です。よくできていますね(棒)

逆に考えれば体験版の機能はフルなのでその場一発でオーディオ書き出しをしてしまえばOKです。
どうしてもフリーで行きたい人は、数種類のエフェクト設定で名前を変えて書き出ししておけば十分実戦で使えます。
そういう使い方で運用すると決めてしまうのも良い選択だとさえ言えます。

 

■有料版

BusTools v3という複数プラグインのパッケージで、価格は40ユーロです。

ToneBoosters | Audio Plug-ins | BusTools 3

以前の単品買いがなくなってしまいましたが、実はさらに昔はこういうパッケージでした。

 

現時点でのパッケージにはTB Barricade3というインターサンプルピーク対応の高品質なリミッターなども同梱されています。他にもテープシミュレータ、アップワード(デコンプレッサー)をやりやすいバスコンプは即戦力となるでしょう。安くて良いセットだと思います。

特にBarricadeはかなり昔から評判の良いリミッターとして知られている定番リミッターです。パラメタ設定ができないフリー版をISP事故防止用として使っていた人も多いはずです。

 

■有料版への移行操作、アクティベート方法

デモ版から完全版へのレジスターはdllと同じフォルダにキーファイルを置く方式です。

この処理は手動で行う必要があります。

レジスターをしておかないと、デモ版のままです。パラメタが保存できません!

もしパラメタが毎回もとに戻ってしまうトラブルが起きているとしたら、それはデモ版のままだということです。

dllファイルを置く場所はDAWによって異なります。「(DAW名)dll 場所」などで検索して、DAWごとのファイル管理について知っておく必要があります。この知識はToneBoostersを使わなくても絶対に必要な知識ですので、もし知らなかった場合にはこの機会に覚えてください。

Studio One dll 場所 - Google 検索

FL Studio dll 場所 - Google 検索

Cubase dll 場所 - Google 検索

Logic dll 場所 - Google 検索

pro tools dll 場所 - Google 検索

 

キーファイルは無くさないように自分宛てメールに添付したり、USBメモリに入れておくなどして大事に保管しましょう。

 

■ライセンスの譲渡

譲渡の際には事務作業が必要になるそうです。
support>License transfer の説明文中にある「online form for a license transfer」から、793円で申し込みをする必要があります。1ヶ月程度で処理をしてくれるようです。

 

■見た目と主な操作

以下の画像は古いバージョンのものです。2017年現在では若干変わっています。

よく使う操作ボタンと意味が分かりにくいボタンについてのみ説明書きをしました。
v3になってボタン配置と操作性は向上しています。

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■左下、歪み除去系

DC、(DCノイズフィルタ)。打ち込みでは不要。オフ。
AP、(Auto Phase)。リニアフェイズ的に位相乱れを抑制する独自アルゴリズム。バストラックや低域の補正の場合に必要ならON。サイドのレベル上げだけに使う場合や音色作りEQとしての目的なら不要です。

 

■右下、レベル調整

・In gain、Out gain

エフェクト手前の入力、加工後の最終出力レベルを指定できます。
EQは加工後には全体の音量が上下します。音量が変わった分、エフェクトから出て行く直前に補正しておけば、チャンネル出力、センド入出力のレベルを変更する必要がありません。

個人的にはあらゆるエフェクトについていて欲しい便利な機能です。
これが無いとEQを変更した後であちこちのレベルを調整しなければならなくなってしまうからです。
特にサイドチェイン(SC)に関わるトラックでは注意が必要です。コンプの引っ掛かりがまるっきり変わってしまうからです。

 

インアウトのレベルが重要である理由は、TB FLXがコンプだからです。

コンプということは、入ってくる音量に対して反応度合いが違うということですから、「どのくらいコンプ感をつけるか」に直結します。

アウトプットレベルはコンプについているメイクアップと同じ意味です。

 

EQで帯域バランスを作り、インアウトでコンプ感を一括調節。という使い方で一気にサウンドメイクが完了します。

 

・%Wet

各バンドを大ざっぱに設定してからウェットバランスを動かして使います。過剰なカット/ブーストを抑制できます。
オートメを書けば「メインボーカルが入った時用のカット」を一時的に無くしてオケを主役として聞かせることもかんたんです。

エフェクタに触っている時はついついエフェクトを効かせすぎてしまうものです。
エフェクト設定後、「しばらくして耳が慣れてきたらウェットバランスをちょっと落とす」という使い方で過剰なエフェクトを抑止する方法で使うのが良いと思います。
ダイナミックEQ(コンプ)として使う場合には、コンプ窓で操作するだけではなく、インプットレベルを上げてコンプに引っ掛け、アウトプットで適正音量にする、という使い方があります。入力レベルが変わるとコンプへの引っ掛かりが変わってしまうので便利です。

 

・Comp ON/OFF

下から2段目のボタン。
ダイナミックEQ(コンプ+EQ)としての機能を使用する場合にはONにします。右上のコンプウィンドウを使います。

コンプのグラフィカル表示が行われない場合にはプラグインを開き直し等で対処します。
Cubaseの場合には「手前に表示」をON/OFFすると表示が正しく行われることが多いです。これは他社製プラグインでも同じ対処法が有効です。

 

■プリセット保存

TB-FLXならではの機能を多用しようとすると初期設定が煩雑です。
自分好みの設定が出来上がったらDAW用プリセットを保存しておくべきです。上の画像ではCubase用の保存ボタンに印をつけていますが、他のDAWでも「プラグイン内蔵のプリセットではなく、DAWの設定保存ボタン」があるはずです。

1曲作り終わる頃には良い感じの設定が1つは出来上がっているはずです。その設定をプリセット保存しましょう。数曲作っている間に平均的な設定や、自分が頻繁に使う機能だけをONにした状態を厳選することができるはずです。
最終的にはプリセットを呼び出してちょっと動かすだけで良い感じになる汎用的な設定を幾つか登録しておくだけで済むはずです。
「これはスネア用、これは女性用ボーカルバラード用、これは……」と無数のプリセットを登録することには何の意味もないというのが私の考え方です。

 

■精密操作モード

TB-FLXはShiftキー+マウスで精密操作モードです。

・Shift、マウスが遅くなる微調整モード
・Alt、横移動のみ(Shift+可)
・Ctrl、縦移動のみ(Shift+可)

非常に便利です。他社プラグインにも同様の機能が付いているものが多いです。

ただ、あまり精密さにこだわるよりも、他のトラックの音と一緒に全体のサウンドを聞きながらスイスイ作っていく方がミックスのワークフローとして優れていると思います。

優れたミックスのワークフローについては、海外ミックス技術情報を翻訳した記事がありますので、ぜひそちらも読んでみてください。

 

eki-docomokirai.hatenablog.com

 

 

■多彩な機能

・MS付き6バンドダイナミックEQ

TB-FLXは6バンドの多機能EQです。
6バンドは完全に独立した設定が可能なので、バンドごとに「ここはステレオローカット」「ここはサイドだけゲイン」「ここはセンターだけダイナミックEQ」「ここはトータルゲイン」「ここはステレオコンプ」「この3つはステレオマルチバンドコンプ」という使い方が自由な組み合わせで可能です。

もちろん変則的な操作による位相の乱れは大きいので、凝った使い方をする場合は左下のAP(Auto Phase)をONにしておいたほうが無難です。

 

 

・フィルター品種

フィルタ品種は30種類です。

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ベルシェイプは一般的なデジタル模倣とアナログ模倣の2種類があります。水平部分への接続の滑らかさを選べるという意味です。
Q調節だけでは追い込めないニュアンス作りでベルシェイプが複数あると便利なことがあります。

画像左下(青緑色)はトリム用。もちろん逆向きもあります。

 

・マルチバンド処理

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rectangle(矩形)を組み合わせて緻密に設定しておけばTB-FLXを6バンドのMSマルチバンドコンプとして使うことも可能になります。設定マニアの人はどうぞ。
暇な時にこういうのを作っておくと、後で役立つことがほぼありません。え?
作ってはみたのですが、どうにもクセの有り過ぎる音でつかいものになりませんでした。
マルチバンドコンプにとって大事なのは帯域を明確に切り分けていることより、適切なクロスフェード帯域の設定のようだ、とうことが良くわかった一件でした。知っている人にとっては「当たり前だろアホが」程度の話ですね。さーせん。

 

・Brickwall-HPF(LPF)

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個性的で使い勝手の良いハイ/ロー・パスフィルター。
垂直(に近い)ローカットは音楽的にあまり意味が無いこともありますが、生録音やIR系のアンビ、オクターバーの使用で過剰に膨らんでしまった低域をほぼ完全にシャットアウトできます。また、Qを変更することで角を丸くすることもでき、意外と使い勝手が良い飛び道具です

切断面で非常に耳障りな音がするのが欠点なので、一般的なミックスでのハイ/ローカットとは用法が異なります。具体的には完全ローカットをしたい時と、アップリフターなどの効果音やローファイ演出の色彩変化に使えることがあります。

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すべてのローカットフィルターにはトータルゲインできる機能が備わっています。
左の画像で水平部分が+-0より上になっているのを確認してください。
ゆるいローカットを選んでおいて全体チョイ上げするのが便利。
TB-FLXの右下にあるIn gain/Out gainでもほぼ同じ効果が得られますが、EQ画面だけに操作を集中しながらゲインを操作できるのは快適です。
マスタリングの際には、各所の膨らみ補正と同時にレベラーとして使いやすいです。

 

・HSF no resと、LSF no Res

シェルビングですが、これはMSで活躍します。

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聞きなれない略語は「ハイ・シェルビング・フィルター、ノーレゾナンス」の意味。
シェルビングフィルターです。
おすすめ用法はサイド上げで低域だけは崩したくない時。
個人的にMS処理について思うのはハイローすべてのサイドを上げすぎてめちゃくちゃな音(そ合わせ技でマルチバンドリミッタぶっこみ)。
プロアマ問わず稀に良く聞くそういう崩れた音が流通していますが、サイドのハイロー上げすぎを抑制するために便利です。下品なサイド上げはどうかと思いますが、適切に中域サイドを上げた音は快適なものだと思っています。

シェルビングのQは下画像のように非常に柔軟です。余計なレゾナンス角とか出しません。アナログシミュレートとかクソですよクソ。

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Mのみにアサインしたシェルフを別バンドに立ち上げておけばMSバランスをスピーディに調整できます。6バンドあるのでM/S各3バンドのMSEQとして使いやすいです。

この作業を単一プラグインの中で行えるでマスタリングの際にとても便利。(他社の後発品の高いEQがようやく追いついた感があります。これが20ユーロ以下で買えるというだけでもMS厨房まっしぐらだと思うんですが。)

 

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オート・ノードリンク。全帯域の上下。
バンドの1つをサイドにアサインしたAuto Node Linkにしておくと、MSバランスをシームレスに操作できます。超便利。
オートメーションを書いておいて曲中のシーンに合わせた演出もかんたんです。

 

 

・Harmonics

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ハーモニクス操作フィルター。
Q調整で起伏を変更できます。

とりあえずハーモニクスを触れますが、倍音算出のアルゴリズムがあまり実用的ではないです。
徹底的にハーモニクスEQを行いたいならMeldaのEQの方が自由度が高いのでおすすめ。

 

・Brickwall BPF

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幅を変えられるバンドパスフィルターは効果音作りでちょっと便利かも?

もちろん通常のベルシェイプBPFもあります。

 

■ビジュアライザ

無いよりマシな程度のアナライズ・ビジュアライザです。

基準値や解析の設定ができないのでTB FLXのスペアナとコンプのメーターは「無いよりマシ」程度です。ちゃんとしたスペアナを別に表示するか、いっそのこと耳だけでやってしまったほうが良いです。

アナライザは通常ではステレオサミング。MidかSideを選択し、片方だけを表示することもできます。MSについてはアナライザより耳で聞くのが何より大事じゃないかなぁと思っていますが、上げすぎになってしまう人はどうぞ。

というか、サイド上げすぎの初心者というか上級者ぶった勘違いオペレートをしている人がかなりいるようなので、SPANでMS表示する方法を紹介するべきなのかなぁ。(ググれば他の人が書いた記事がすぐに出てくるので私が書く意味が無いと思っています。)

コンプ部分の操作感は大雑把です。精密操作(上述。Shift、Alt、Ctrlとマウスの組み合わせ)を使って整えるべきでしょう。

 

・コンプ(ダイナミックEQ)

TB-FLXは通常のEQとしての使い方の他にダイナミックEQの機能を持っています。

近年はダイナミックEQも一般的になってきましたが、まだ知らない人に説明する時には「ディエッサーはダイナミックEQ」とだけ言うようにしています。

「もっと自由に使えるディエッサーがダイナミックEQ」だと思っておけばOKです。

それが6本合体しているのがTBこのFLXです。

 

通常のスタティックなEQでピークを叩くとその帯域は「常にカット」されてしまいますが、ダイナミックEQなら「指定音量より飛び出した時だけカット」ができます。要するにディエッサーですね。

 

いわゆるマルチバンドコンプは「幅広い帯域で可聴域を分割」ですが、TB-FLXのようなダイナミックEQでは「ピンポイントで指定」となります。
ディエッサーが声の高周波を抑制するのと同様に、アコギやベースがラフな演奏でバキっと鳴ってしまった時やスネアがオープンリムで打った時の過剰なピークなどとピンポイントで任意に抑止できます。

生音系のサンプリングシンセで特定の音だけ突出してしまう場合にも使えます。

 

通常のミックス工程だけで考えると「ディエッサーは声に対して使うもの」とだけ考えている人も多いようですが、事実ディエッサーを弦楽器系に対して使う人が存在することも事実です。諸説ありますがディエッサーはもともとマルチバンドコンプの一部の機能だけを抜き出して軽量運用できるようにしたものです。マルチバンドコンプをさらに柔軟にしたものがFB-FLXのようなマルチバンドダイナミックEQです。

 

 ■コンプモードをオンにする

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バンドコンプを使いたい時には下部のCompボタンをON。この画像の場合は「バンド6」の「コンプ機能をON」です。

帯域ごとに異なるコンプ設定ができます。
ニーを2箇所(3箇所)指定でき、自由な位置にマウスで配置できます。
逆コンプ(エキスパンダ)やネガティブコンプ、多段コンプとしても使えます。

特に便利なのがアップワードコンプとして設定した状態です。

アップワードコンプについては別の記事で書きましたのでぜひ読んでみてください。

 

eki-docomokirai.hatenablog.com

 

ただし、先述したとおり、TB FLXのコンプ部分のメーター表示は大雑把です。

数値で指定できないことと、GUIの見た目の割に効き幅が大きすぎるので、ニー付近に表示される数値を見ながら操作する必要があります。ここは欠点。

コンプのリリース時間はデフォルトではオートになっていて、それなりに良好な回復をします。下部のAR(Auto Release)ボタンが光っていればOKです。かんたんに使う場合には神経質にならずオートに任せておき、どうしても明確な効果を望む場合にのみARをOFFにしてリリース時間を指定すればOKです。この辺りは新し目のコンプと同じ扱いです。

 

・多段スレッショルドと変則コンプ

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※この画像は見やすいように極端な設定にしています。

そこそこ柔軟なコンプです。
左下の0.0/0.0のところにあるポイントも移動すればニーを1つ増やせます。
この方法だとソフトニー設定がON/OFFだけでも柔軟なコンプ設定が可能です。
ネガティブ設定や多重設定も十分に可能です。

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実際にバストラックで使う場合はかなりの音量が入ってきているはずなので左画像程度の僅かな設定にすることが多いんじゃないでしょうか。

個別トラックの場合には右のようにリミッター的な使い方もできます。

In gainとOut gainをうまく使っても良いでしょう。

微調整したい時にはShitfキーを押しながら操作します。

 

コンプは一箇所だけ曲にあったスピード感に設定したら、コピペ(後述)を行って他のバンドにもとりあえず入れておくと良いです。

 

先述したとおり、コンプとは入力された音量に対して反応が変わるものです。

インプットレベルとアウトプットレベルを調節しながらコンプ感を整えるのが良いでしょう。

 

・コンプ設定のコピペ

毎回6箇所すべてを設定するのは面倒です。
コンプ窓の左上にある「▼」を押して、「Copy all from sec. X」を使います。

例えば6番のコンプ設定を5に流用したい場合には、
バンド5を選んで「▼」
「Copy all from 6」を押します。
これで5に6のコンプ設定が反映されます。

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同様に、

4を選んで「Copy from6」
3を選んで「Copy from6」
2を選んで「Copy from6」
1を選んで「Copy from6」
で完了です。

帯域ごとに分けたくない場合には、どこか1つのバンドをAuto Node Linkにしましょう。こうすればシングルバンドコンプと同じですね。

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■サイドチェイン(面倒)

内部設計が古いので標準的なサイドチェインの設置方法ではできません。

「FLX」と「FLX4」を組み合わせて信号をやり取りする、特殊なスタイルです。

これが面倒だと思うなら、通常の設置作法がで

www.maustopia.com

きるコンプを使うべきです。同社EQ4とか。

 

もしくはCubase内部ルーチング(チャイルドバス)を駆使するしかありません。チャイルドバスについては下のブログ記事がかなり詳細です。(が、それでも非常に面倒です。)

 

 

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別トラックにさしたFLX4をトリガーにして、元トラックのFLXのコンプを行う組み合わせ方式のSCです。

プロジェクト内にあるFLX4とFLX無印は勝手にリンクされます。(Cubase6.0)

ただし、リズミカルなトリガーリダクションを必須とするダンス系のキックで使うSCとしての運用には向いていません。コンプ部分にホールドがついていないので操作感が悪いです。

このSCは、

1、別トラックに設置したFLX4の特定帯域をトリガーにして、
2、元トラックに設置してあるFLXの特定帯域をリダクションする。

という特殊な機能です。
マルチバンドに対する他トラックからのSCという意味です。
他には無い機能なのでイメージしにくいかもしれません。

「帯域かぶりを回避するスタイルのミックス」がありますが、それとはちょっと方向性が違うアプローチで「帯域がかぶった時にどちらかが必ず逃げる」という「ダイナミクスバランスを重視する方針のミックス」をプラグイン設定一発で行えます。
ただこれ、自分がやる時は「あらかじめ逃げて空間を作っておく、そこにソロが入ってくる」というコンセプトで実施しているので、ダイナミックEQでやらずに当該トラックのEQオートメを作って実装しています。
それよりもっと細かく制御しきれないものをダイナミックEQで逃がす時に使うのが良い、と思っています。

また、トリガートラックになるFLX4そのものも同等の機能があるので、マルチバンドコンプとして作用しつつトリガーの役目を果たすことができます。

この機能はどう設置するかを確認しただけで、まだ実戦で使っていないので詳しくは書きません。
サイドチェイン厨の人はこの機能だけでも飯3杯行けるんじゃないでしょうか。

例1、ティンパニが鳴った時にはキックの高域アタック成分だけを残しつつ、低音をティンパニに任せる
例2、ボーカルのミドルローが鳴っている時にアコギのミドルローのアタックをリダクションする
例3、センドリバーブの中域重複による膨らみを防止するために、元トラックの中域トリガーでリバーブの中域をリダクション

などの変則的なミックスを、オーディオ書き出ししてからの帯域分割を行わず非破壊で行えるよ、という機能です。もちろんAuto Phase機能をオンにしておけば帯域歪みも補正してくれます。

何言ってんだこいつ、意味わかんねーよ。と思った人回路イメージを絵に書いてみれば分かると思います。

と、長々書いておいてアレですが、私はこのSC機能は使っていません。設定が面倒すぎます。特定帯域のサイドチェインを目的としてプラグインを購入するのであれば、他社製品(WavesC6)などのほうがはるかに使いやすいはずです。というかそもそもそういうミキシング処理って本当に必要ですか?といのが私見です。まぁ、ミックスで片っ端からいじくりまわす楽しさは分からないでもないですが。
もし本当にそういう処理が必須なのであれば、今後のDAWプラグインの進化によって、帯域SC等の処理は当然の装備になっていくと思われますし、本当に必須な人はすでにWavesC6等で対応しているはずですし。

※VST3のToneboostersではCubase6以降でお馴染みのSCボタンなどは表示されません。
同一プロジェクト内にFLX4が設置されていると勝手に検出してリンクします。たぶん処理遅延はかなり起きていると思います。(Cubaseプラグイン情報表示でレイテンシは4096です。)
ためしにマスタートラックにFLX4を設置して手前のトラックに無印FLXを設置。つまり無限ループが起きる配置にしても普通に動いていました。とてもあたまがいいですね。


■地味に便利なウェットバランスとインアウトゲイン

ウェットバランスを50%にすれば、±6dbに設定したカット/ブースト量を±3dbにできます。ちょっとかけすぎたかな?という時に便利です。
これはすべてのバンドに一括処理されます。また、パラメタは100%の状態で記録されているので、0%に落としてからふたたび100%にしても同じ数値に戻ってきます。

 

■リニア/ノンリニアの中間的な処理

リニアフェイズEQの技術的な説明こちら(1) を参照
要約すると「リニアフェイズのほうが重たくなるのは当然。」

クリエイタサイドからの説明こちら(2) を参照
要約すると「一長一短。パンチのある加工だが壊しかねないノンリニア、ぬるりと加工するが高音アタック以外は破綻しにくいリニアフェイズ。」

簡単に説明するとリニアフェイズEQは音の崩れが起きにくい高品質です、が、綺麗すぎてパンチが出ない一長一短がある、ということです。
ノンリニアは音が崩れるものの、その崩れが音楽的に良い感じになることもあり、どちらも一長一短です。
で、すでにEQで処理済みの音が集まってくるバストラックでノンリニアを使うと「良い感じにノンリニアで崩したサウンドがさらに崩されて味がなくなる」という悲惨な結果を生みやすいです。そういう悲劇を起こさないためにバストラックではリニアフェイズを使ったほうが無難です。(DTMで音楽制作を行うことを活動フィールドにしている人はそれ以上のことは知る必要はありません!)

で、TB-FLXはリニアフェイズとノンリニアの中間のような処理を内部的に行っているようです。中の人談。それほど音の崩れも無いし、遅延も起きにくいようです。詳しいことは知りません。
この準リニアフェイズ処理はプラグインの下側にあるAP(Auto Phase)ボタンでオンにできます。
ON/OFFで聞いてみて良い感じの方でOKです。

使っていた印象はかなり薄味。
良くも悪くも効きが柔らかくクセが出にくいです。
これはそのまま欠点でもあり、特にキックやベース、シンセなどのローカット用途では大暴れしているローを殺しきれないことがよくあり、他のEQを使ったり重ねたりして徹底的なカットをしなければならないことが稀に良くありました。

 

■挙動の重さ

上で説明したリニアフェイズ的な重さの他、コンプ機能を使うと明らかに重たくなります。
便利だからと言って機能をフルに使って、なおかつ複数トラックで使うとあっという間にプチプチ鳴ってしまいます。
PCに余力が無い人は使用したい機能だけを使うのが良いと思います。

Cubaseプラグイン情報でのレイテンシを以下に。

L316は6207。
TB-FLXは4096。
SplineEQは2368
VW2は639。

とはいえ、Cubaseプラグイン情報に表示されているレイテンシはあくまでもレイテンシであって、処理の重さとは無関係です。

下に続く。

 

■あくまでもバスツール(やや重い)

PC性能と相談して複数使用をしてください。

多機能ゆえにやや重たく、複数のトラックで大量に使うことには向きません。

そもそもバスツール(バストラック、グループトラックにまとめた複数トラックをなじませるための一括処理)なので当然です。どうしてもTB-FLXの効果を個別トラックで必要とする場合には頻繁にオーディオ書き出しを行うことが必要になるはずです。
感覚的には各社の単機能EQより数倍重く、Photo Sounderの "Spline EQ"(ものすごくキレの良いリニアフェイズEQ。$29。)よりは明らかに軽い、という感じです。パラメタ設定数によってはそれも逆転することがあります。

私が使う場合は、多くても

  1. ベース系をまとめたバス
  2. ドラム全体のバス
  3. オケ全体のバス
  4. ボーカルのバス
  5. トータルに入れてマスタリング用

という感じです。

 

■総括

・どういう人におすすめか?

すでにWavesなどで単機能のEQは間に合っていて、もうちょっと多機能なモダンプラグインが欲しいなー、という人。

付属じゃちょっとなー、という人。

リニアフェイズも持っておきたいけど、リニアフェイズってなんか地味なのばかりでなー、という人。

でも高いEQなんて買ってもなぁー、という人。

 

まぁ、騙されたと思って買ってみても良いと思いますよ。20ユーロ程度ですから。

 

私は購入以来、ほぼすべての曲で常に複数使っています

自分ができる最高クオリティまで仕上げる時でも、雑なデモの時でも、使っていないことはまず無いです。これとL316と付属だけでどうにかなるとさえ言える。だから買え。まじで。

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