eki_docomokiraiの音楽制作ブログ

作編曲家のえきです。DTM/音楽制作で役立つTIPSを書いています。

Meldaのお話

(人気記事!)Melda Productionの傑作フリープラグインの紹介です。この記事は Ver.8.0 の頃に書かれた内容に一部追記しているだけです。2020年6月現在 Ver14.07 なので参考程度にどーぞ。

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(2020年10月18日更新)

過去バージョンの話です。

最新版については適時読み替えてください。

 

Meldaはガチプロの人も絶賛してる高機能なプラグインです。音は余計な加工しないクリーンな方向性。ある人は「ポストWavesになりうる」とさえ言っていました。

が、最初に断言しておきますが、多機能の代償として信じられないくらい複雑でとっつきにくいです。カスタマイズ好きなオタク人向けだと断言できます。コンピュータの各種設定を細かく行うことに抵抗のない人ならおすすめ。

Wavesのワンノブとかシグネチャー、あるいは近年のAI系のような簡単オペレートを直感的に行うのが好きな人にはまったく向いていません。

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■価格は無料でOK

いくつかの基本的なエフェクタ群の入った「フリーバンドル」はフリーで永久に使えます。

フリーバンドルに対して課金すると、ちょっと機能が増えます(後述)。2017年3月17日現在49ユーロ(5944円)です。

・初回購入者のためのクーポン 

クーポンコード

MELDA2264563

を入れると、初Melda購入時に2割引きで買えます。メール登録でさらに割引き。

私にも1割のポイントが入ります。

 

なんだかんだで現在225ユーロ分のポイントを頂いています。(すでに数百ポイントを使用済み。)

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・課金版で増える機能

  • 見た目変更(どうせダサいので意味無し)
  • アナライザ表示の強化(ソノグラム追加など)
  • プリセット保存可能
  • モジュレーター機能(普通は無くてもOK)
  • アップサンプリング(注意、貧弱PCでは邪魔になる)
  • 下部広告が消える
  • 感謝とお布施

普通に使うなら無料版で十分すぎる性能です。

・購入候補をしばらく「カートディレイ」できる

頻繁に行われる半額セールの時にカートに入れておけば、カートから削除しない限り半永久的に半額を維持できます。この購入方法は昔から「カートディレイ」と呼ばれていて、使えるショップと使えないショプがあります。

迷ったら何でもカートに入れるだけ入れておきましょう。

Meldaの場合、今まで調べた限りでは2ヶ月ほど維持されるようです

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なお、セール価格にさらにポイントを使って安く買うこともできます。例えば上の6170円に対し、6170円分のポイントを使えば無料になります。

・ライセンスの譲渡

有料です。手間賃がかかります。

手間賃は「割引なしの定価」から算出されます。

セール期間でも定価からの計算です。

・同じプラグインを重複購入できるか?

できません。

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■M/S機能とアップサンプリング

厨房御用達のMS処理とアップサンプリングもついています。

ほら。お前らM/S処理好きなんだろ?Meldaならいくらでもできるぞ。フリーで。

簡単オペレートで飽きるほどM/S加工やって「あー、こういうことかー」と、さっさと悟ってしまいましょう。

 

右にある「L+R」を押して「M+S」に変更するだけです。これでMSを加工できます。この操作はMeldaの全てのプラグインで共通です。

多くのDTM系サイトがドヤ顔で書いている複雑な前準備とかまったく必要無いです。チャンネルをMとSに分けて~とか書いてるサイトは5年とか10年前の話であって、今ではあんな面倒くさい処理は全く必要ないです。(というかMeldaはその5年前とかからずっとこの機能がついています。)

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画像の赤い◯がアップサンプリング。最大16倍。そりゃまぁ擬似的な措置だから限界はあるけれど、劣化をかなり防げます。CPU負荷があからさまに上がるので、よほど繊細な処理でもない限り、初期のX1で十分です。

緑の◯がチャンネルモードの変更。わずか2クリックでサイドのみにEQをかけられるモードになります。

マスター付近でアップサンプリングを上げてサイドを少しあげることで、いわゆるMS処理に求められる加工が完了します。(同様にMeldaのコンプでサイドのコンプ感を処理すれば良いですね。)

もちろんMidのみにもできます。Midでボーカルを邪魔してしまっているトラックを逃がす処理が一発でいけます。

 

追記。

その後のアップデートでチャンネルモードの機能が向上しています。

初期状態の「L+R」では「L、L+R、R」の3系統から選択可能

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MSモードにすると、「M、M+S、S」の3系統から選べます。

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ただし、完全な柔軟さではありません。

不可能な例として、「このバンドはLのみ」「あのバンドはSのみ」にはできませんプラグイン全体が対象を変える、というスタイルであり、カテゴリーの中での三択でしかありません。

2020年の時点でMSに触れないプラグインはその存在価値がかなり低いと思います。有料だろうと無料だろうと。

(一昔前は「MS処理ガー!」と吠えている人たちがいましたが、今では付属やフリープラグインでさえ当たり前の機能です。今どきMS処理の話を自慢してくるDTM仲間がいたり、自分でググってるとしたら、完全に情報が古いです。情報収集の方法を根本的に変えましょう。)

■レイヤードアナライザ

初学者にとってきわめて有効な機能です。

その後、DAWの標準機能や、サードプラグインのEQにも多く搭載された「透かしアナライザ」はMeldaの初期からありました。

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その他、メイン画面にはアナライザ表示を重ねられます。

リアルタム出力される波形、またはピーク(+ステレオ位相差)を表示できます。

それぞれの表示は加工前と加工後を任意に表示できます。

 

透かしアナライザだけなら他にもありますが、Meldaはアナライザをなめらかに表示できます。「非常に音楽実務を理解している」優れた仕組みです。

この機能により、細かいピーク表示にとらわれずにマクロなバランス調節に集中できます。

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アナライザは細ければ良いというものではありません。音楽的に必要な情報を表示できるように変更しましょう。 

■設定比較機能と、状態コピペ

プラグイン右側にあるABCDEFGHの文字にアサインし、8種類のプリセットにワンタッチで呼び出し&戻ることができます。

あらかじめセッティングしておけば8種類の中からワンタッチでプリセットを呼び出せます。もちろんA<>B比較機能もあります。なので、1つのトラックに1つのMeldaのEQを挿しておくだけで、多種多様な比較を行いながらミックスを行うことができます。

比較の途中でキープしておきたい設定が出来上がったら、A~Hの箱にコピペできます。これも2クリックで操作完了するので便利です。いちいち名前を付けて仮プリセット保存する必要がありません。こういう点も非常に音楽実務を理解している優れた設計です。

 

ただし、M/Sやアップサンプリング、ゲイン制御などの根幹部分の機能はA~Hの簡易プリセットには保管できません。この部分だけ片手落ちな気がしています。

また、コピペのアイコンもちょっと理解し難いデザインなのは欠点です。MeldaのGUIデザインは何年たっても良くなりません。私を含む有志が何度も具体的に提案を送っているのですがまるで反応なし。たまに「どちらのGUIが良いか?」というアンケートがありましたが、その選択肢はどれもクソというありさまでした。チェコ国内以外からまともなUIデザインナーを雇うべきだと思います。 

■デフォルト状態の指定

地味に一番強力だと思っているのが、デフォルトセッティング登録機能
これを設定しておくと、プラグインを立ち上げた時にいつもの設定で起動してくれます

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この機能もその後の他社製品やDAW標準機能として広く普及しました。Meldaは初期からこういう機能を持っていました。


良い感じのEQ設定、環境設定が出来上がったら、右上のSETTING→Set Default Settingを押すだけです。
わずか2クリックで保存できます。

たとえば、
「ローカット+ハイシェルビング+残りのバンドはナローQピーク4本」
「ローカット、ハイカット+残り4本はミディアムQピーク」
「ナローQピーク3本とワイドQピーク3本」
などの組み合わせ

これは他者でも見習って欲しいなーと思っている素晴らしい設計思想です。(※それをすべてぶち壊しにするほど酷い暗黒面も併せ持つのがMeldaのダメなところ。)

■変則シェイプ

1バンドのみの操作で倍音EQ加工ができます。
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倍音はオクターブか線形を選択し、さらにそこから任意の幅と振幅回数を選択、減衰率を指定できます。

画像の左下のようなよくある集中カットのシェイプをプリセット化しておけばすぐに呼び出すことができます。
ホワイトノイズを加工して作る単純なアップリフターをより色濃く作ることも可能になります。

この「一箇所をしつこく平たく潰す」加工は昔からプロエンジニアが使うEQテクニックとして知られていました。それを一発でできるわけです。

が、その後はいわゆる「フラットトップ」という形状で\___/に加工できるEQが流行しています。MeldaのEQもさっさとフラットトップシェイプを実装するべきだと思います。

■ついでなのでコンプも紹介

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これも根幹になる項目はEQと同じで、M/Sやアップサンプリング、自動ゲイン調整、プリセット、比較、デフォルトセッティングなどがついています。これはMeldanoほぼすべてのプラグインで共通です。

Meldaのコンプは変態的なシェイプを作ることができるので、画像のようにゲート+WavesのMV2のようなダイナミクスレンジを狭くして一気にファットな音に持っていくこともできます。極めてナチュラルなニーカーブの真骨頂です。

eki-docomokirai.hatenablog.com

 

 

バージョン10.07からはVST3によるサイドチェインコンプ(ダッキング)もできるようになりました。完璧です。 

eki-docomokirai.hatenablog.com

よくコンプの質感がどーのこーのと言われていますが、結局のところコンプの個性の半分くらいはニー角度によるものであって、自在にパラメータを設定できるMeldaのコンプで大抵のコンプ・カラーは出せてしまいます。(その設定が面倒だからコンプのモデル名に頼ってイージー・オペレートをした方が良いよね、というのがコンプの個性についての話です。)

惜しむべくはウェットバランスとパラレルがついていないことです。

■任意ニー

多くのコンプに搭載されているソフトニー/ハードニーの切り替えをさらに発展させた機能があり、これがMeldaコンプの最大のアドバンテージだと思っています。

ニー変更だけではなく斜面も湾曲することができます。

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つまり上記の機能を組み合わせると「コンプ」「リミッタ」「ゲート」「アップワード(デコンプ)」を一括管理できるということです。特に斜面を湾曲する機能でゲートをかけると、ソースを問わず無音寸前の処理をものすごく綺麗に、しかも簡単にできます。

この「カーブに対して」入力ソースを適合させるためにインプットゲインがついています。入力ソースの音量に対して、毎回カーブを設定する必要がありません。これは極めて優れた設計です。下で説明。 

・コンプの変態シェイプ

あくまでも「なんでもできる感」を見せるための画像であって、実際にこんな設定で音を出すことは無いです。念のため。

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普通のコンプだとレシオとスレショ、Knee設定を行うところですが、実に変態的な制御が可能です。

左の画像例では、異常なシェイプが描けることの紹介として、モダンシンセのエンベロープのような起伏と、リミッター水平線も入れてみました。何に使うのか謎な機能が満載なのはMeldaの特徴です。
 

もうちょっと実用的なカスタムシェイプ例の画像を追加。

f:id:eki_docomokirai:20170317035913p:plainこういうシェイプだと、圧縮だけではなくアタック感の確保が綺麗にまとまります。

こういう処理をトランジェント系・アップワードコンプでやると無駄に突出してしまいがちなところですが、Meldaコンプならレベル管理が容易です。ジャンルを問わず非常に便利ですよこれ。  

■イン・アウトレベルが使いやすい

地味に便利なのがインプットレベルを操作しできること。

インアウトゲインのついているコンプはその1点だけで5割増しで使いやすい優秀なコンプだと断言できます

なまじアナログ実機エミュレーションが丁寧だと、「特定の音量レベルで入力してあげないと、コンプ本来の性能が出せない」という使いにくいものになってしまいます。そういうエミュレート系も、インプットゲインだけでもつければ良いのになぁ、と思います。

また、インアウトをマルチパラメータ機能に組み込んでおけば「イン+12してアウト-12」という設定で、常に音量を正規化することも可能です。この設定を組み込んでおくとコンプ設定で悩んでいたのがアホくさくなるくらいの超イージーオペレートができるようになります。マルチパラメータについては説明が面倒なのでがんばってください。(有料のレッスンでは丁寧に教えています。)

こういう実用的なマルチパラメータの設定が最初から入っていれば本当に神がかり的なのになぁと、ちょっと残念。

ところで、インアウトのついていないコンプはそれだけでかなりの減点だと思っているのですが、どう思います?

■その他

すべてのMeldaプラグインエフェクトには、過出力予防のための簡易リミッタ(LIMITERボタン)、加工前後のラウドネスバランスの自動補正(AGCボタン)があります。

自動でそこそこの音量レベルに調節してくれます。

が、私は使っていません。  

■操作性

EQの項目で書き忘れていましたが、Meldaのプラグインの操作はマウスオペレートに特化していて、ホイールやCtrl+クリックなどでさまざまなパラメータを制御できます。右クリックで数値の初期化ができるので、これだけは覚えておいて良いと思います。

操作には個人の好みもあるので優劣を言うのは難しいですが、トップ級に多彩な操作ができることは間違いありません。精密操作モードや拡大表示、QやKneeの操作はすべて見た目通りに行えます。

拡大表示はゲートの設定をする時にものすごく便利です。アホでもきれいなゲートを作ることができます。

 

■さいごに 

というわけで数年ぶりにMeldaの紹介記事を書いてみました。

過去にやっていたブログでもMeldaの使い方について割りと細かく書いていて、それなりのアクセス数があったようです。マニュアルもいらん話が多すぎるし、謎のボタンが多すぎてとっつきにくいよなぁ、と思ったのでそういう記事を書きました。

その後は大きくバージョンアップされ、使い勝手も結構変わったように感じています。

前バージョンの頃に原因不明のエラーによって「Meldaのプラグインを挿し、外すとEQWが100%即落ちする」という症状に見まわれ1年ほど使っていませんでした。

このたび晴れて復帰したので新バージョンのチェックもかねて画像多めの記事をつくりました。

ここ1年くらいPro-Qの人気が凄いようですが、同等かそれ以上の機能を持っているMeldaのフリー版を試してみて、「フリーでこれだけできるなら買わなくても良いじゃん」という気持ちになるかどうか試してみてはいかがでしょうか。

今回の記事では「非常に便利なんだけどどこから操作するのか謎」な部分を重点的に紹介してみました。

分からない点があったら放送中もしくは掲示板などで質問どーぞ。暇な時なら答えられる限り解答します、たぶん。

気が向いたら帯域住み分けミックスの友、なんで誰も使ってないのか不思議なくらい便利なマルチアナライザーとか、ToneBoosterの話でも書くかもしれません。

みんな有名ドコロや時事人気で同じようなプラグインに飛びつく傾向が強いようですが、他人に遅れを取って追走するより、未開拓に近いマイナーどころを使ってみるのも楽しいですよ。

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